今回はオオタカを追いかけていた2年前に、書きかけていて途中だったものを完成させましたのでアップします。
ちょっと嫌われ者のカラスについて、お届けしようと思います。
猛禽の進出で肩身が狭くなりつつあるカラス
ごみを散らかしたり、繁殖時は巣に近づく通りすがりの人の頭を小突いたりと何かと嫌われているカラス。
見かけも、黒一色と、かわいげがないが、近くで彼らの瞳をのぞいてみると猛禽のいかつい瞳と比べ、真っ黒の中に意外にも純粋な輝きと、かわいさがある。夜空に輝く星座のひとつにもなっており、神話の中でカラスはもともと白色をしていたそうな。何かしらやらかして、罰として神様に黒色にされてしまったという。
古代の時代から人からあまり好まれていなかった鳥である事も伺い知れる。
大抵人の住む場所、海沿いから山の上まで世界中何処にでもみられるカラス。
オオタカの撮影のためにいつもの公園に行くと
毎日、カラスの仲良し夫婦は一緒に同じ時間に帰って来て、いつもの場所で水を飲み、いつもの電柱で一休みした後で塒へと向かった。いつものように夫婦仲良く眠るのだろう。
そして朝になれば、また早朝、一緒に同じ時間に出勤していく。
けっこう、いつも時間を守るまじめな働き者でもある。
今までは公園生態系の頂点として訓辞していたカラスではあるが、オオタカがやってきて以来、追い出され、全くもって肩身が狭くなってしまった。
「もともとここは俺たちの場所だ!」と縄張りを取り返すため、大勢でオオタカ撃退に挑戦はするが、結局追い払われ、ますます肩身が狭くなっていく。
大勢でオオタカに挑戦するものの、最終的にはオオタカから逃げ回るしまつ
成鳥のオオタカには全く持ってかなわないカラス。時にはオオタカに食べられてしまう事もあるというので、カラスは及び腰である。
カラスはアフリカのサバンナなど国立公園などの大自然の真っ只中ではあまりお目にかかれないが、国立公園の中でもレンジャーポストやロッジ等、大自然の中でも、人が荒らした場所にはほぼ毎度お目にかかれる存在。ある意味人の作った環境に寄生する生き物ともいえるだろう。
さすがにアフリカ最高峰5895メートルのキリマンジャロの頂上ではお目にかかれなかったが、4565メートルのタンザニアのメルー山に登った時には、山頂でカラスに出くわした。登山客のお弁当などの食べかすなどあさりに来るのだろう。
わざわざ標高3000メートルの7キロほど離れたハットのある彼らの塒から飛んで来るようだ。
タンザニア第二の高峰 メルー山、標高4565メートル
ハットから頂上まで、歩いて登るのは数時間苦労して登らなければならないが、空を飛ぶ彼らにとっては上昇気流をつかまえてあっという間に苦も無く頂上まで登って来れるのだろう。上の写真、撮影場所の先が絶壁になっていて上昇気流が吹き上げる。写真後方、一番高いところがメルー山、4565メートルの山頂である。
実際、一般に知られているように非常に頭がいいようで、人も識別出来るようで、更にその特徴を他所のカラスにも伝える事が出来るそうな。「これこれこういった特徴の人間はパチンコで撃ってくるから気をつけろ!」とか。
仲間同士では各固体同士それぞれ誰だか認識しあい、ヒエラルキーのもとに行動しているようだ。
ひとたび仲間内での喧嘩が始まるものならば、その多くが加勢する。
順位の低いものが、より順位の高いものに加勢し恩を売り自らの順位をより上位に、そしてちょっと上の順位のものを引きずり落とそうとする。
仁義に従わないものに対しては容赦がない。
「おきて」に背くカラスは集団にて制裁を受ける事に、
時には命を落とす事も。
左は、何かしらやらかし仲間内で集団リンチに合ってしまい、半殺しにされたカラス。
この後、一旦立ち上がったもののすぐに力尽きてしまった。
カラスは人に嫌われているだけではなく、小鳥たち、また中型の鳥たちにも嫌われている。
生きるため、食べるため等であれば理解できるのだが、カラスに対して危害を与えているけでもない水面を泳ぐカルガモにわざわざ飛行しながら頭を小突いたりと嫌がらせをしたりする事も目撃した。
そんな隣人に嫌がらせをするカラスはどんな心境なのだろう、仲間にやられた憂さ晴らしでもしているのだろうか?こんな事をするカラスは集団の中でも弱いのけ者のような存在なのかもしれない。きっと弱いものに対して八つ当たりなのだろう。
そんなある日、カラスが川で溺れてているところに遭遇した。
上空には大勢のカラスがわめきたてている、「俺たち仲間の1人が溺れたぞ!」。
騒ぎを聞きつけた他のカラスたちも「何事だ!?」「何事だ?」と1羽、また1羽と上空にカラスが増えていく。
あるカラスは「何だ、あいつか、いい気味だ!」といっているかのように、状況確認しだいすぐにどこかにいってしまう。
カルガモに仕返しの仕打ちを受けるカラス
おそらく、カルガモの頭を小突こうとして、誤って着水、溺れてしまったのだろう。
溺れているカラスは、川の両岸を行ったり来たりしていたが、どちらも絶壁で水深も深く足が着かず陸に上がる事が出来ない、一生懸命にもがくものの、もがけばもがくほどに水を飲んでしまい体は沈んでいく。
いつも頭を小突かれているカルガモは、「ざまあみやがれ!」とでも言っている様に執拗に溺れるカラスを攻撃するのであった。
もがく羽の力は徐々に鈍り、さらに大量の水を飲んでしまっているようだ。肺にも水が入ってしまっているのだろう。徐々に沈んでいく。
最終的には力尽きてしまったカラス
しばらくもがいた後、一度頭を上げたかと思うと同時に力尽きてしまった。
なんとも惨めな最後であった。
力尽きたカラスは枯れ葉と共にゆっくりと下流に流されていった。
この一部始終を上から見届けたカラス、反省してカモを小突くのを止めるだろうか?そう望みたいものだ。
カラスに限らないが、こういった絶壁護岸では多くの動物たちが川の水を飲んだり、水浴びしたりと利用する事が出来ない。
ぜひとも人を含めより多くの生き物が利用できるような親水護岸をより多く取り入れてもらいたいものだ。
嫌われ者のカラスではあるが、オオタカのような肉食鳥類から小鳥たちを守っていたと見る事も出来る。
オオタカが来るまで、ハトや小鳥たちが優雅に過ごしていた憩いの場も、今ではその場所はオオタカの狩り場。
近所の住人の鳥たちは怖がって寄り付かなくなってしまった。
小鳥たち、きっと影でカラスを応援しているのだろう。
「カラスよ、いつもあれだけ威張っていたくせにだらしないな!早くオオタカを追い出してくれよ!」とか
都市部に猛禽類が進出してきている今、生態系の頂点から引き摺り下ろされてしまった感のあるカラス。
常にダイナミックに変化している自然。今後、都市生態系の主導権争いがどのように変化していくのか気になるところだ。
■
いつもながら、全ての文章は管理人自らの経験と観察、勝手な妄想によって描かれたものであり、特に科学的根拠があるというものではありません。