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Photographer Takashi Iwamoto Blog

ブログ | アフリカ フォトグラファー 岩本貴志|ドキュメンタリー ビデオ / 写真 撮影

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バルブクリアランスの調整、特殊工具を使わず、ひとりでも作業できる方法、ランクル1HZエンジン

更新日:2023年9月19日



このブログでは、筆者がケニアで長年乗り続けているランクル75、トゥルーピーの整備日記をご紹介しています。


今回は、1HZエンジンのバルブクリアランスの調整について取り上げます。


全ては、専用工具などは使用しない、アフリカンスタイル。


ランクル購入と同時に購入したマニュアル本、いつもながら、この本を参考に作業を行っています。


マニュアルには必要とあるシムを取り外すための特殊工具(バルブリフター)、今回お目にかかれなかったので、独自に編み出したシムの交換方法も紹介します。


マニュアルではないことを、ご留意し是非ご参考までに。

作業は自己責任でお願いします。



ランクルマニュアル

ランクルバイブル、今はもっとぼろぼろ




 


バルブクリアランスの調整をする事にした


かなり前になるが、愛車ランクルのエンジン音がガラガラと、大きくなってきた。

特に下り坂で、エンジンブレーキをかけて走行する時に発生するうなるような音。


トラックのような音で、健康な1HZ の音ではないなと感じるようになった。

オイルを変えても多少は改善されるものの、音程はあまり変わらない。


加速時の黒煙も多少多いようで、原因は何だろう?

その他、基本的な、燃料フィルターの交換やら、インジェクターポンプの調整、進角の調整やらをやったがどうにも、希望の音になってくれない。



そんなこんなで、最後に疑われたのはバルブクリアランスのばらつき


バルブクリアランスにばらつきがあるのでは?と疑い、バルブクリアランスを調整する事にした。


1HZエンジンは、コイン型のシムを交換する事で、バルブクリアランスの調整が行なえる。


以前、2013年に行なった作業、今回はその時の事を取り上げる。


個人的に、最強エンジンと思っている。

1HZ、直列6気筒、4.2L、自然吸気のディーゼルエンジン



最強とは力が強いという事よりも、図太いトルクで悪路でも走りやすく、丈夫で壊れにくいという意味で。


4.2リッターの余裕のあるサイズ、ターボ非搭載で力を無理して出さないので長持ちする感じだろうか。


ケニアのサファリカーのほとんどが、このエンジンを積んでいると言っても過言でないほどのポピュラーエンジンでもある。


過酷な環境で質の悪い燃料を使用してもへこたれず、確実に動いてくれるエンジンという事だろう。


さらには多少のオーバーヒートでもへこたれない。


直列六気筒は、バランスがよく、音もいい!(個人的感想)



上記したように、いかなる環境でも回ってくれるエンジン、オイルの管理さえ怠らなければ、100万キロでも走ってしまうという。


無理に力を出さない、自然吸気の1HZエンジンは、大きな余裕があるがために普通に長持ちしてくれる。



直列6気筒、SOHC、バルブは前から順に吸気、排気と並び全部で12箇所


直列六気筒のSOHCの1HZディーゼルエンジン、カムシャフトは1本、バルブは、前から吸気、排気と順に並び、全部で12箇所


バルブクリアランス表記のステッカーがエンジン、シリンダーヘッドカバーに貼ってあるのを結構見かける。






吸気、排気それぞれ求められるバルブクリアランス


1HZエンジンのヘッドカバーを取り外すと、カムシャフトと、バルブ調整用のシムが露になる。

直列6気筒のSOHCディーゼルエンジン。

前から順に、吸気、排気の順に12箇所、シムを交換する事によって、バルブクリアランスを調整する。


  • 吸気側は0.15~0.25mm

  • 排気側のクリアランスが0.35~0.45mm


クリアランスは、この0.10mmの範囲に入っていればいいという事だ。


バルブクリアランスの隙間の誤差の範囲は0.10mm


ディーゼルエンジン、見かけによらず、中身は非常に繊細だ。





 

作業開始


まずは、シリンダーヘッドにごみが入らないように、周辺をきれいに掃除。

雑巾以外にカメラ用のブロアー、塗装用のはけなど使い入念に掃除した。


念には念を入れて、シリンダーヘッドカバーを開けるまで、何度も繰り返し、ごみを払いながら作業を行った。


後は、計測の正確性を出すために、エンジンは通常走行時の温度に上げて行なう必要がある。


アクセルワイヤー、吸気ダクトを取り除き、最後にシリンダーヘッドのカバーを取り除く。


カムシャフトと、バルブクリアランス調整用のシムが露になった。


これで、バルブクリアランス調整の準備完了。



 

上死点、下死点


そして、バルブクリアランスの計測を行なうために、エンジンのクランクポジションを所定の場所、TDCへ。



TDCとはトップ、デッド、センターの事。日本語だと上死点。


この状態で6箇所、更にBDCボトムデッドセンターで6箇所。下死点。



この、TDCポイントは、前のタイミングベルトカバーを取り外すと、TDCに合わせるべくポイントが表記されており、正確に合わせる事が出来る。



バルブクリアランス、TDC(上死点)ポイントで計測するのは、

前から一気筒として、


  • 第一気筒、IN、EX

  • 第二気筒、 、EX

  • 第三気筒、IN、

  • 第四気筒、 、EX

  • 第五気筒、IN、


バルブクリアランス、BDC(下死点)ポイントで計測するのは、


  • 第二気筒、IN、

  • 第三気筒、 、EX

  • 第四気筒、IN、

  • 第五気筒、 、EX

  • 第六気筒、IN、EX



本来は、そうするべきだったが、タイミングベルトカバーを外す手間を惜しんで、カムの出っ張っていない部分で計測すればいいやと、実際はそうしなかった。


結局、計測中何度も、バルブクリアランスを計測しては車の下にもぐりこんで、クランクシャフトを回す作業を繰り返す事になった。


後から、タイミングベルトカバーを開けてでも、TDC、BDCに合わせれば作業はずっと楽だったなーと思うのであった。


急がば回れ!

スワヒリ語では、Pole Pole Ndiyo Muendo!



隙間ゲージとシム

バルブクリアランスの計測に使用した隙間ゲージ




エンジンのクランクシャフトを所定の位置に手で回すのは固く、重く素手ではほとんど不可能。


オイルフィルターなどを外すのに使う麻ヒモを束ねたロープと、スパナを上手く使って、てこの原理で何とか回す事が出来たが、それでもかなりな力仕事


いつもながら、「スターターモーターのパワーすげーな」と、思うのであった。


このスターターモーター、自転車に積んでギアでつなげれば相当スピードが出そうだ!

時速80Kmは固い!?いや、時速100km以上軽く出そうだ!?相当危なそうだけれど。


マニュアルには

スターターモーター20秒以上回すな!

がんばってもエンジンがかからない場合、15分ほど冷却!

と書いてある、

スターターモーター自転車に搭載するには冷却系もしっかりしなければならなそうだ。





安心のJIS規格


 


バルブクリアランス調整は50000kmごと、うるさくなった場合に限る



このバルブクリアランスの点検作業、手元のマニュアルには5万キロごとに行うよう書かれている。エンジン音がうるさくなった場合に限るようだ。


クリアランスの点検は、上写真の隙間ゲージを使用(上写真)。


バルブクリアランス計測の記録

バルブクリアランス記録用紙



まずは、それぞれのバルブのクリアランスを、隙間ゲージを使って紙に書き出した。


計測して基準値から外れていたバルブのシムを取り外し、その厚さを計測。

交換すべくシムの厚さを算出した。


そんな風にまとめた表が上の写真。



その表はランクルマニュアルにそのまま挟んであったので、手元に残っていた。日付を見ると2013年3月23年、既に8年前(2021年)の作業。



計測で分かった、狂っていたバルブ


計測してみると、前後とも端のバルブのクリアランスの狂いが大きく、どちらも0.05mmほどクリアランスが基準値以上に広がっていた。


また、クリアランスの縮んでいるバルブも2箇所見つかった。


縮まっていたのは上表、6と11、3気筒目のエグゾーストと、6気筒目のインテークバルブ


計測後、所定のクリアランスに収まっていなかったシムは交換する事に。




専用工具バルブリフターを使わないでシムを交換


交換のため、シムを取り外す必要がある。


このシムの取り外し、専用工具もあるようだけど、試行錯誤の末、下写真のやり方が最も簡単なやり方という事になった。




マイナスドライバー大、小それぞれ1本と、リングスパナ1本を使用


大きなマイナスドライパーを確か18-19mmのリングスパナの穴に通し、スライドさせバルブを押し下げる。


上手い具合にバルブを押し込んで、小さなマイナスドライバーを使ってシムを取り外すのだ。


手を離してもバルブを押し下げたまま、固定出来る、これはなかなか良いやり方だと、自分でも関心。


部品に傷をつけることも無いので他人にもオススメ出来そうな方法だ。


バルブリフターを使わずに簡単にシムを取り外す方法

こんな感じで、結構簡単にシムを取り外す事が出来た



この方法だと、1人でも簡単にシムの取り外し作業が簡単に行える。


写真は娘に撮ってもらった。



シムの厚さの計測


マニュアルには、マイクロゲージが必要とあるが、バーニアノギスで行なった。


バーニアノギスの計測目盛は、1/20mm(0.05mm)までだが、ここはアナログのいいところ、アバウトだが目視でこの1/5(0.01mm)ぐらいの計測が可能だ。

眼力は必要だが。



バルブ調整用のシムの厚さ

シムNo.

厚さ(mm)

シムNo.

厚さ(mm)

709

2.35

45

2.85

704

2.40

21

2.90

710

2.45

46

2.95

01

2.50

26

3.00

42

2.55

47

3.05

06

2.60

31

3.10

43

2.65

48

3.15

11

2.70

36

3.20

44

2.75

49

3.25

16

2.80

41

3.30


上の表が、1HZエンジンの新しいシムの厚さと型番

マニュアルの表をそのまま写したもの。


シムの型番がばらばらなのはどうしてなのだろう?


上の表で見てわかる通り、シムは厚さ2.35mmから3.30mmまで、0.05mm刻みで20種類存在する。


という事で、それぞれの差は0.05mm単位で目盛りが読めるバーニアノギスで十分という事。


使用済みシムの微妙な減り具合等を見るには、マイクロゲージが必要だが、

この作業、特にその必要はないな。




マイクロゲージでなくてもできるシムの厚さ計測

バーニアノギスでシムの厚さを計測

上のシム、2.775mmと計測した



上のシムはおそらく、シムの厚さ2.80mmだったものが走行していて0.025mm減ったものと思われる。


シムの交換に必要な、計測はバーニアノギスでも十分対応出来るという事で、マイクロゲージは買わず、余計な出費はせずにすんだ。



シムに刻まれたパターン

シム、下側の磨耗パターン(8年後撮影)



シムには特に大きな傷も見つからず、カムシャフトなどもピカピカだった。

シムの下側には走行中、ぐるぐる回っている事が分かる模様が刻まれていた。


カムシャフトが触れる上側、は全面均一にピカピカだった。

大きな傷は、長年保管中に付いたもの。



当時使用していたエンジンオイルは、値段の安い40固定グレード、2500キロおきに、頻繁に交換していたのもあるのだろう。


最近は、マルチグレード15w-40を使用、だいたい3000キロおきに交換している。


交換は、オイルの触った感触や、エンジン音、パフォーマンスの変化、を目安にしている。

このオイル交換頻度、高速での長距離走行が多ければ、5000キロぐらいに伸びてくるのだ。


オイルにもよるが、走っていて、だいたい2500キロを超えるぐらいから、オイルのヘタリを少しずつ感じるようになってくる。


固定グレードからマルチグレードのエンジンオイルに変えた理由は、高速走行時のエンジン音が静かになったから。


古いエンジンなのでいつも鉱物油を使用している。


エンジンオイルの事についてはこの記事で取り上げている。




信頼のアナログ式、信頼のJIS規格品


読み取りやすいデジタル式



 

計測の結果



バルブクリアランスの計測の結果、4箇所で所定のクリアランス範囲から外れていたが、クリアランスが所定範囲ぎりぎりのシムに関しては取り外し厚さを計測。


なるべくバルブクリアランス所定の範囲の中心に揃うようにした。


中心の値は

  • 吸気バルブ、0.20mm

  • 排気バルブ、0.40mm


それぞれ交換で済むものは交換して済ませたので、最終的に2個のシムの買い足しただけでバルブクリアランスの調整は済ます事が出来た。


といっても買わずに済んだのだが。


厚さごとに並べたシム

バルブクリアランス調整時の写真、シムを厚さごとに並べた




以前エンジンをばらした時に交換し、とってあったシムに、使えるものが無いかも確認。


ノギス片手に店をまわって2個の必要なサイズのシムを手に入れた。


ラッキーな事に、店のおやじさん、「選挙で応援していた大統領が当選した!」との喜びで、シム2個を無料でくれた。

この作業を行ったのは、ケニア大統領選、結果発表の直後。


それぞれのシムを所定の場所に装着!

全てのシムの装着を終え、クランクを一回りさせて、再計測。


全てのバルブクリアランスは、所定の範囲に全て収まった事を確認した。


あとは、取り外し作業の逆回し。

全ての部品を元に戻した。


 


調整後のテスト結果


そして、エンジン始動!


エンジン音は、アイドルから、がらりと音色が変わった。

濁音が減って、クリアになった感じだ。

スタート早々その変化が分かるほど、音色が変化した。


走行テストの結果も、黒煙も減ったようだ。

特に、作業前気になっていた下り坂でのエンジンブレーキ時のエンジン音、以前に比べてずっと静かになった。



たった0.1mm程度のバルブクリアランスの変化でここまでエンジンの音が変わってしまうとは。

それも交換、調整したのは12個のバルブのうち4個だけ。


頑丈なディーゼルエンジン、中身は非常に繊細だという事を、改めて感じるのであった。



この作業後、1HZのエンジン音、「バルブクリアランス、狂ってるんじゃ?」という音がちょっとだけ聞き分けられるようになった。


この作業を行ってから8年が経過した昨今、再び1HZ直6エンジンの音が若干濁ってきたように感じる。


再びバルブクリアランスの調整、してみるかな。



確実簡単に、作業を行なうには、マイクロメーターがおすすめです。




最後までお読みいただきありがとうございます。









 

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