海や山、キャンプなどに出かける機会の増える夏休み。
そんな旅先で出会うのが夜空に浮かぶ満天の星空。
夜空に輝く星空を写真に残したい!
写真を撮る人であれば、誰しも思う事。
さてさて、どんな風に星空を撮影すれば、星座の浮かび上がった印象的な写真が撮影出来るだろうか?
このブログでは、星空の撮影でどのようなフィルターを使えば、印象的な星座の浮かび上がった写真が撮れるのか検証していきます。
このブログを書いているのは、
アフリカをベースにするフォトグラファー、
岩本貴志、星好きだった少年は、いまだおっさんになっても星を眺め続けている。
コンテンツ
2023年6月、修正を加えました。
■
手軽になった星空の撮影
最近のレンズは非常にシャープで、さらにカメラは高画素で高画質、とにかくシャープに仕上がってくれる。
カメラの進歩は留まるところを知らないようで、高感度ノイズも非常に少なく、超高感度でも美しい写真が撮れるようになった。
最近(2017年)のカメラは、液晶ファインダーで星空と地平線が確認出来るほどの高感度のカメラも出てきている。
さらに、星空の自動追尾機能までカメラ内の撮像センサーを動かす事によって可能にしてしまった機種もある。(リコーイメージング株式会社、アストロとレーサー機能)
とにかく驚きの機能だ。
今後も今では考えられないような、更なる高性能カメラが登場してくる事だろう。
冬の大三角形
そんなこんなで三脚さえあれば、美しい星空の写真を手軽に撮ることが出来るようになったいま。
簡単に神秘的な宇宙の姿が、写真に仕上げる事が出来るようになったのは、とてもありがたい事だと感じる。
星が多く写りすぎて、星座が分からない
ミラーレスや、一眼レフカメラで星空の撮影をすると、肉眼では見られない暗い星まで、驚くほど多くの星が写ってくれる。
ただ、あまりにも多くの星が写るので、見た目の印象とかけ離れ、星座の形が非常に分かりにくい写真になってしまうのだ。
理由は、画面上に無数の微光星が浮かび上がり、星座を形成する明るい星が埋もれて目立たなくなってしまうから。
特に最近のカメラとレンズで撮るとその傾向が強く、明るい星から暗い星まで、どの星も同じように、とても小さな点状に写ってしまう。
レンズの性能が非常に高かくなったのが理由
レンズの収差は極限までに補正され、尚且つ高性能なコーティングや内面反射の処理と相まり、撮れる写真は驚くほどクリアでシャープ。
良くも悪くも、そんな高性能レンズで星空を撮影すると、星像は極限まで小さな点にしか写らなくなってしまうのだ。
明るい星の光も極々小さな一点に集中するので、星座を形成する明るい星は白飛びしてしまい、色までもが分からなくなってしまう。
そんなレンズで星空を撮影すると、どうも無機質で、印象的な星空写真には仕上がりにくくなってしまうのだ。
星空の撮影で、星座を浮き上がらせる方法
星空の撮影で、星座を浮き上がらせる方法にピントを少しだけずらすという方法もある。
その方法だと明るい星は浮き上がるものの、いわゆるピンボケ写真で、暗い星は消えてしまい、せっかくの高画素カメラと高解像度レンズが台無しになってしまう。
そこで出てくる助っ人が、ソフトフィルターやクロスフィルター。
ソフトフィルターは、ある意味ちょっとだけぼやかすフィルター。
霧や、もやがかかったように見せる効果のあるフォギーフィルターとは似ているがちょっと違う。
ソフトフィルターは被写体が若干にじんだように見せ、被写体の細かな部分を、くっきりとさせない効果があるフィルター。
例えは皮膚のしわ隠しだとか、柔らか、フワッとした感じに表現する効果があるフィルターだ。
今回、星空の撮影で星座を浮かび上がらせるには、どんなフィルターが良いのか実際星空を撮影して比べてみた。
今回使用したフィルター3枚
明るい星を浮かび上がらせるのに適当と思われる、手元にあったフィルターは、3種類。
ケンコー・トキナー社製の、
PRO SOFTON-A(W) プロソフトンA
SOFTON SPEC[B] ソフトン スペックB
R-CROSS SCREEN R-クロススクリーン
フィルターは1枚だけでなく、重ねて組み合わせたりもしながら、星空を撮影して、効果を比較してみた。
今回使用した3枚のフィルター
左から順に、プロソフトンA、 ソフトンスペックB、 Rクロススクリーン フィルター。
プロソフトンA、ソフトンB フィルター
同じソフトフィルターとしてプロソフトンAとソフトンBの違いが気になるところ、
プロソフトンAは、ソフトンBよりもフィルター表面のパターン細かいのが解かる。
プロタイプはプロと名の付くだけあり、両面に高品質なコーティングが施され、枠が薄い。だから、重ねて使う場合に有利だ。
AとBは効果の強弱を表しているようで、AよりもBの方が効果が強い。
それに対してプロタイプでない方は無コーティング。
あえてぼやかすために取り付けるフィルター、逆にゴースト、フレアが出たほうがより狙ったイメージに近い絵を出す事もあるので一概に良し悪しは言えない。
R-クロスフィルター
最後にRクロススクリーンフィルターは細かい縦横の傷のような縞模様がフィルター全域に施されている。
回転機構が付いていて、クロスの出方を360度自由に調整出来る機構となっていて、光芒の出る方向を360度自由に設定出来る。
その分けっこう分厚い。
この傷に沿って星から光のラインが発生。縦横2本なので、星からは合計4本の光芒が広がる。
テストに使用したカメラとレンズ
カメラはニコンD800E、レンズはニコンAF24-70mmf2.8G、焦点距離は35mmに設定しそれぞれ開放、ISO400で、3分間の露出を与えて比較してみた。
最後に望遠レンズでもテスト、
ニコンAF180mmf2.8Dの望遠でも撮り比べてみた。
一世代前のニコン標準大口径ズーム AF-S Nikkor 24-70mm f2.8 G
上が今回テストに使用した標準ズームレンズ。
テストは赤道儀を使っての追尾撮影
露出3分と固定撮影では星像が流れてしまうので、赤道儀で追尾しての撮影。
使用した赤道儀は、管理人が小学生の時、今からおよそ30年前に購入したビクセン社製のスーパーポラリス赤道儀。
当時は当たり前の日本製、最近のこのクラスの外国製の物と比べると、かなり頑丈。
重要な部品は、高精度な加工が施された金属製。
値段から考えると今では驚くほどしっかりとした作りだ。
その甲斐あって、今だ無故障でずっと使えている。
ギアのかみ具合等細かい調整も六角レンチで簡単に出来てしまう。
細かい事はさておき、赤道儀を使用しての追尾撮影については、そのうち日を改めて、書ければと思っている。
テストする星座は南十字星
今回のテスト撮影、せっかくアフリカにいる事なので、南十字星(南十時座)周辺の明るい星もふんだんにある南天、最も賑やかな場所をターゲットに選んだ。
南十字星と中央右寄りにはエーターカリーナ星雲があり、全天でオリオン座にも負けずと劣らずにぎやかで美しい領域だ。
下に今回のテストした写真を掲載する。
まずはフィルター未使用の写真から。
フィルター未使用
フィルターは何も使わず撮影したのが上の写真。
天の川の中、中央左寄りに南十字星か写っている。
南十時星は非常に有名な星座だが、パッと見ではなかなか見つけ難い。
明るい星も暗い星も多少は違いが分かるものの小さな点として再現され、星の色も、星座の形がわかりずらい。
同写真をピクセル等倍まで拡大
これはちょっと古いズームレンズなので星像は多少ボッテリしているので、星座の形は何とか分かる。
最近の超高性能、単焦点レンズなどで撮ったら。もっと星座の形は分からなくなるのだろう。
R-クロスフィルター使用
R-CROSS SCREEN フィルター使用
お次はは、R-CROSS SCREENフィルターを使ったもの。
クロススクリーンというだけあって、星にクロスが発生。
同写真をピクセル等倍まで拡大
明るい星はより長く、星の明るさに応じたサイズのクロスが発生。
ただ、明るい星も小さなまま写って十字ばかりが強調され、何か不自然な感じがする。
クロスフィルター単独では星から発生する光芒が不自然に延びるので、星空の撮影にはあまり向いていないように感じた。
R-クロスフィルター + ソフトンスペックB フィルター使用
SOFTON SPEC[B] フィルター使用
ソフトンスペックBフィルターを使うと、明るい星ほどより大きく写り、星座を形成する明るい星がより大きく写るので、星座の形がパッと見で浮かび上がった。
高温の青い星、低温のオレンジ色の星、そしてその中間の星と、星の色もより鮮明に浮かび上がる。
フィルターを使いう事によって非常にいい感じで星座が浮かび上がった。
同写真をピクセル等倍まで拡大
ただソフトンスペックBをつかうと、ぼやけすぎるのか、暗い星は、見えなくなってしまった。
微光星がつぶれてしまうという事は、芯を残さずにぼやかしてしまっている感じだろう。
ソフトンスペック Bフィルターは、明るい星は美しく表現されるものの、芯が崩れるのか微光星がつぶれてしまう欠点がある事が分かった。
それと、光芒の広がり方がちょっと汚い。
プロソフトンA フィルター使用
PRO SOFTON-A(W) フィルター使用
SOFTON SPEC[B]フィルターと比べると、パッと見ではそんなに違いは見られないが、明るい星はさらにより大きく写る事が分かった。
さらによく見ると、より暗い星まで、芯が残ったままつぶれないで残っている。
同写真をピクセル等倍まで拡大
上のSOFTON SPEC[B]と比べると芯を残しながら明るい星を、より大きく光芒を広げる感じだ。
星空写真では微光星が消えずに残る、プロソフトンAのほうがずっといいように感じる。
プロソフトンAは、明るい星をより大きな光芒として表現でき、尚且つ微光星を残す、星空の撮影では非常に理想的な効果を発揮するフィルターだという事が分かった。
SOFTON SPEC[B] + R-CROSS SCREEN フィルター使用
SOFTON SPEC[B] + R-CROSS SCREEN フィルター使用
ソフトンスペックBとR-クロスフィルター二枚のフィルターを組み合わせて撮影。
当然ながら、それぞれの効果が合わさって星の輝きが表現されている。
星像が、大きくにじんだ分、クロスフィルターによる十字の効果はかなり薄れてしまった。
同写真をピクセル等倍まで拡大
ソフトンスペックBは、芯を崩してぼやかすフィルターのようなので、クロスフィルターの効果が薄まったのだと思う。
これまででいちばん星座が浮き上がって写っている。
ソフトンスペックBとR-クロスフィルターのいいところが合わさり、より星空を見た印象に近く表現出来るフィルターの組み合わせだと分かった。
PRO SOFTON-A(W) + R-CROSS SCREENフィルター使用
PRO SOFTON-A(W) + R-CROSS SCREENフィルター使用
お次はプロソフトンAとR-クロススクリーンの組み合わせ。
ソフトンB、R-クロススクリーンの組み合わせと等しく、の二枚のフィルターのいいところが合わさり、より効果的に星空に浮かぶ星座の表情が表現されている。
同写真をピクセル等倍まで拡大
SOFTON SPEC[B]との違いは、前記した通り、プロソフトンAは星の芯が残るので、R-クロスフィルターの効果がより生かされ、星の輝きももしっかり表現されている。
工房の広がり方も自然で美しい。
頭で思い描く星空に近い感じに仕上がった。
最後に全てのフィルターを重てのテスト
PRO SOFTON-A(W) + SOFTON SPEC[B] + R-CROSS SCREEN フィルター使用
最後に3枚のフィルターを重ねてみた。
上の二枚組み合わせた写真の効果がさらに強くなり、より幻想的な雰囲気に仕上がる。
ちょっとやりすぎでぼやけた感じはするが、悪くは無い。
同写真をピクセル等倍まで拡大
ソフト感が増した分、クロスフィルターの効果は少なくなった。
また、コントラストも大きく低下。
。流石にフィルターが3枚組み合わすのには多少の無理があるようだ。
それと、フィルターを3枚重ねると、非常に厚くなってしまうので、広角レンズだと周辺がけられてしまうので注意が必要だ。
より幻想的に、星空、そして星座を表現するのであればフィルターを3枚重ねるのもありだろう。星像が最も大きくなり、星座がより強調される。しかしながらクロスフィルターの効果が小さくなるので、星の輝き感は多少落ちる。それとコントラストが落ちるのと、広角レンズではケラレの心配がある。
変化がわかりやすくなるようGIF画像にした
写真の色が若干変化しているのは、撮影中の空の変化によるもので、大気上空の発光現象のようだ。
望遠テストに使用したレンズ
今度はレンズを変えて、180mmの望遠で南十字星を撮影。
現行レンズではなくなってしまった AF Nikkor 180mmf2.8
上がテストに使用した180mmレンズ、開放近くでは色収差が若干残り、最近の70-200mmf2.8クラスに劣るものの、抜けが良いレンズ。古いデザインのレンズだが、ちょっと前まで現行販売されていた。
購入はもちろん中古だが、管理人が中野をうろついていた時、値段の安さで思わず衝動買いした代物。
180mmf2.8でのテスト結果
フィルター無しと、R-CROSS SCREEとPRO SOFTON-Aを組み合わせたものだけを比較してみた。
露出は3分、絞りは開放のf2.8、でテストした。
フィルター未使用
お分かりだろうか、画面中央に大きく南十字星が写っている。
肉眼でははっきりと明るく見える南十時星であるが、無数の微光星に埋もれてしまい、わかりずらく、パッとしない。
レンズが高性能になりシャープであればあるほど明るい星もより点像に近くなり、微光星の中にさらにうずもれてしまう。
レンズが高性能であればあるほど、より小さな点に星の光が集中するので、さらに白とびして色が消えてしまう。
星空の撮影では、高性能なレンズで撮るほどに味気ないドライな写真に仕上がるという事になる。
さて、プロソフトンAと、R-クロスフィルターを装着して撮影するとどんな仕上がりになっただろうか?
下の写真がフィルターを装着して全く同じ領域を撮影したもの
PRO SOFTON-A(W) + R-CROSS SCREENフィルター使用
同じカメラとレンズ、同じ撮影条件にクロスフィルターとPRO SOFTON-A(W)を装着するだけで、こんなに星座が浮きあがって写るのである。
思わずハッとするような星の輝きと、美しさが表現された。
探すまでも無く、南十字星の姿が目に留まり、とてもフィルター無しの写真と同じ条件で撮影したとは思えない仕上がりである。
星の微妙な色合いまでより分かりやすくなった。
標準の焦点距離35mmで撮影した写真と比べると、180mmの望遠では、同じフィルターを使っているのにもかかわらず、フィルターの効果はより大きくなった。
星空の撮影では、ソフトフィルター、クロスフィルターの効果は焦点距離が長くなるほど拡大され、大きくなるようである。
こちらもGIF画像にして、フィルターの効果を分かりやすくしてみた。
変化をGIF画像にして分かりやすくした
まとめ
今回比べてみて星空の写真を撮るのに、最も効果を発揮したフィルターはPRO SOFTON-A(W) と R-CROSS SCREENフィルターの組み合わせだった。
星の明るさや輝きがより美しく表現出来、なおかつ暗い星までつぶれないで写ってくれる。
しかしながらフィルターを組み合わせて撮影するので、広角レンズではケラレが発生してしまうという欠点がある。
今回35mmを使用したのは3枚重ねてケラレなかったから。
広角レンズでもけられが発生しないよう、1枚でこの2枚を組み合わせたのと同様な効果を持ったフィルターがあればいいとかんじた。
理想の星空撮影フィルター
今回のテストで分かった、星空を撮影に星座を際立たせる理想のフィルターは、
超広角でもケラレないように、1枚で、クロスフィルターとソフトフィルターが合わさった感じのフィルターがあれば良いな。もちろん薄枠で。
効果が3種類。
大、広角用
中、標準用
小、望遠用
これらのフィルターを組み合わせても面白そうだ。
フィルター名は何にしよう?
トゥウィンクル星座フィルターかな???
おわり
■
最後までお読みいただきありがとうございました。
ソフトフィルターや、クロスフィルターを使って星野写真を撮ってみたら如何でしょうか。
他にも、多くの種類の星野写真に使えそうなフィルターが各社から発売されているので、色々と試してみたら楽しそうです。
個人的にはスノークロスや、サニークロスフィルターで星空を撮てみたいなと思っています。
三脚とデジタルカメラがあれば誰にでも簡単に撮影できるようになった星空の写真。
レンズを通して、星空、宇宙への興味が沸いてくるかもしれません。
ケニアで撮影した星空、星雲、星団をケニアの人々にも星の世界に興味を持ってもらおうと12分ほどの動画にまとめたものです。
説明文は英語になります。
関連記事
Comments