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Photographer Takashi Iwamoto Blog

ブログ | アフリカ フォトグラファー 岩本貴志|ドキュメンタリー ビデオ / 写真 撮影

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執筆者の写真岩本貴志

ニコン、Ai 50mm f1.2 、 とろけるボケ味と深い味わい、写真を撮るのが楽しくなるレンズ

更新日:2023年6月15日

コンテンツ




1、最近のレンズはどれもシャープだが何か味気ない


最近発売されるレンズのシャープさ、切れの良さには心底驚かされる。

良いものは値段も良くて、なかなか手が出せないのだけれども。

風景など、高解像度のカメラと組み合わせて撮れば、驚くほど細かいところまで写ってくれるのでなんとも爽快だ。


ただ撮るものによっては何か物足りなさを感じる事がよくあるのである。

「何か味気ない、なんだろう?」 特に人物などを撮るとその味気なさを感じる。

とにかくシャープで、ボケも周辺までまん丸でエッジも柔らかく申し分がない、逆光にも強い。だけれどもドライで温かみを感じないのである。


新レンズには多くの新技術が導入され、いろいろな収差がものすごく少なく超高性能となっている。その事が影響しているのかもしれない。

今まで程よく残ってくれていた様々な収差が、実際はレンズの味わいとして、撮る写真にある種の特殊フィルター効果を加え、写真に一層の味わいを加えていたのだろう。

これが、いわゆる「レンズの味」といわれているものなのだろう。

そんな中管理人のお気に入りのレンズの1本のうちに、最近のレンズとはま逆を行く、とろけるボケ味と深い味わいをとりえにする1本がある。

それがニコン、Ai 50mm f1.2 だ。


Ai Nikkor 50mm f2.8s

管理人の最も好きなレンズ、ニコン50mmf1.2



2、管理人お気に入りの一本、とろけるボケ味と深い味わいのあるレンズ、ニコン、Ai50mmf1.2


ここで管理人の使っている中で特にお気に入りのニコンのマニュアル50mm準レンズ、Ai Nikkor 50mmf1.2sを1本紹介する。


このレンズは、管理人が本格的に写真撮影を始めようと志した大昔、25年以上前に購入したのだが、一度売り払ったのを、買い戻したものだ。売り払った理由は、保管中の不注意でレンズ内に曇りが発生、清掃修理に2万円以上かかるというのが理由。


売り払った時、同じレンズを買い直すのはしゃくだったので、AF50mmf1.4sに乗り換えた。

このAF50mm f1.4s、線は太く逆光に弱くフレアもすぐに出る、作りもプラプラしていて、星を撮っても星像はボテッと切れ味が無く、どうしても好きになれなかった。


という事で、結局、50mmf1.2s を再び買い戻す事になった。もちろん中古品であるが。




3、実写性能


このレンズ、古いレンズの割りに良く写る。


50mmf1.2開放、最短作例

開放最短撮影距離の描写



開放のf1.2だとさすがにフワッとぼやけたようになるけれど、ピントに芯が残り、ちょっとしたフォギーレンズのような効果が出る。

f1.2の明るさ、流石にボケ量は大きい。



50mmf1.2開放最短、ピクセル等倍

最短撮影距離、開放ピクセル等倍


ピント面、芯を残しながら、大きくふんわりととろけるような描写をする。



また、フィルター径が52mmと小さく口径食の影響で開放だと周辺部の光量の落ちが若干激しい、それもまた写真にスパイスを効かせてくれる。



下の写真は開放で撮ったものだが、色の渋さとあいまって、適度な収差が残り、今時の出来過ぎ君レンズには無いなんともいえない雰囲気をかもし出す。


f1.2はピント面が非常に浅いので、ピント合わせにはプロ機精度のファインダーが必要だ。

最近のカメラであれば液晶で合わせれば確実だろう。そもそもミラーレスだったらそんな心配も要らないか。


50mmf1.2開放作例 漁師の舟

f/1.2 開放で撮影、漁師のボート(サントメ・プリンシペ)



f1.4に開放から半絞り絞るだけで、画面全体に締りが出てきて雰囲気ががらりと変わる。

f2まで絞ると全体がかなりシャープになってくる。


絞りf2はf2.8と比べ、より大きなきなボケが発生して被写体をより浮かび上がらせるので、写真の印象はまるっきり変わってくる。

一般的な明るい高級ズームはf2.8なので、f2で撮れるというだけでこのレンズを使う価値を感じる。


今時の明るいレンズと違って非常にコンパクトなので、カメラバッグに忍ばせていても苦にならない。

重量360グラムと最新のシグマ50mmf1.4の815グラムと比べても半分以下。

同じ明るさのキャノンのAF50mmf1.2は580グラム

更に重量以上に密度が高いので、よりコンパクトに感じる。

ピント合わせテクニックは必要になるが、ポートレート撮影などで、強い助人となってくれる事は間違いなしだ。

ここ一番の写真を撮りたい時、じっくりと撮れる時には最近の仕事でも、このレンズを結構使う。

重要な撮影でも、一枚一枚液晶でピントを確認すれば済む事だ。

オートフォーカスの撮影でも、重要な撮影では撮影後ピントの確認をするので、結局同じ事。


プロ機、D3のスクリーンだとバシバシピントが決まる。眼の調子がいいとオートフォーカス以上かもしれない。

D800E、ピントの山がつかみにくかったが、D850になってピントの山が非常につかみやすくマニュアルレンズも実用で使えるようになった。


50mmf1.2、絞りf2.8ポートレート作例、サントメ・プリンシペの笑顔

絞りf/2.8でのポートレート、西アフリカの孤島、サントメ・プリンシペの少女


これぐらいのポートレート、絞りはf/2.8ぐらいがちょうどいい。

ボケはじめが滑らかなので、自然な立体感が出てくれる。


4、絞りの形


絞りは9枚羽、特に円形絞りではないカクカクした形。

円形絞りだらけになった今時のレンズに対して、このようにカクカクした形のほうが、写真のオリジナリティを演出出来たりする事も。


Ai50mmf1.2sの絞りの形、8角形

9枚羽のしぼり、裏側から覗くとF2.8でこの形


小さく(F16)絞るまでゆがみはほとんど無い正九角形。


この絞り、高輝度の点光源を撮ると、光点から18本の光芒が発生したりする。

この効果も、クロスフィルターほどしつこくなく、写真にスパイスを与えてくれるので、また面白い。


Ai50mmf1.2s 最小絞りf16

最小絞りf16


このレンズの最小絞りはf16。f22まであってくれたらと思うのだが、f1.2からf16のその差7.5段、機械的連動の限界なのかな?


上の写真を見て分かるのだが、最小絞りにすると、流石にいびつな形だなー。


絞りの形もまたレンズの味わいの一つ。

丸けりゃいいというものでもないのである。



5、天体写真での実用性

Ai50mmf1.2s 天体作例、オリオン座付近、絞りf2.8

星空でもf/2.8に絞れば十分使える、シリウスの青いハロが美しい


上の写真は50mmf1.2をf2.8まで絞って、オリオン座にシリウスが入るようにして撮影したもの。フルサイズノートリミング。


写真全体の雰囲気を見ても、線は細く繊細に描写する高性能レンズだという事が出来る。

星像は画面の周辺まで点状に像をを結び、青いシリウスとリゲルの輝きの周りには美しいハロが広がった。


この、明るい星の周辺にボヤッと広がるハロ、多少の収差が残っているがために現われるレンズの味わいの一つ。

シャープネスに関して、最近の出来過ぎ君レンズのシャープさには及ばないが、中心部だけだったら結構健闘出来そうだ。


下に掲載した写真は天の川中心部分を、上と同様f2.8に絞って撮ったもの

星野写真にどれ程使えるかは、周辺部の星像が気になるところ。

下に中心部に加え周辺部のピクセル等倍写真を掲載した。


Ai50mmf1.2s 天体作例、いて座付近、絞りf2.8

f2.8、露出3分


星の密度が最も高く周辺減光が分かりやすい領域。フルサイズでの撮影。

こちらも絞りはf2.8、露出は3分


上のオリオン座の写真よりも、天の川の無数の微光星によって周辺光量の落ち込みが分かりやすい。画面の四隅、端の部分、急激に暗くなっているのが分かる。

ちなみに、ビネットコントロールなどの周辺光量の補正は行なっていない。


Ai50mmf1.2s 天体写真画面中新婦ピクセル等倍

画面中心部ピクセル等倍



上の写真の中心部をピクセル等倍で出したもの。星像はシャープでコントラストも高くレンズの優秀さがうかがえる。使用しているD800Eは3600万画素

程よい収差が、星と星の明るさの違いと色の違いをしっかりと表現してくれている。



Ai50mmf1.2s 天体写真作例、画面右上端ピクセル等倍

フルサイズ右上端、ピクセル等倍



最周辺部は流石に大きなサジタルコマ収差が発生しているのが分かる。右上の方向にツバメの群れが飛んでいっているような模様だ。

3600万画素でこの大きさなら、実用範囲だろう。

F2.8からさらに絞ると、この収差は小さくなり、絞りを開けると大きくなる。


色収差に関しては、特殊低分散ガラスなど使っていないのに殆ど見られない。

とても優秀だ。



Ai50mmf1.2s 天体作例、APS画面左下端、ピクセル等倍

APSサイズ左下端、ピクセル等倍 2400万画素相当


同写真、APSサイズ画面左下端のピクセル等倍にして切り出した、サジタルコマ収差は殆ど発生せず画面全体が非常にシャープだ。


フルサイズの端のだけを除けば、最近のレンズと比べても殆ど遜色の無い力を秘めたレンズだという事が分かる。

APSサイズであれば画面全域にわたり文句なしにシャープだ。

APSサイズならさらに絞りを開けてf2.0でも、十分、星空写真で使用出来そうだ。



6、レンズの発色


発色に関しては、最近のレンズと比べると青く冷たい発色をするので、新しいレンズと一緒に使う時は注意が必要だ。

厳密に撮るのであればホワイトバランスを合わせ直す必要があるだろう。


これは一昔前、マニュアル時代のニコンカラー。

管理人の好みの発色。

このレンズと最近のレンズを同条件で撮り比べてみると、最近のレンズはすごく黄色く淡く感じるのだ。

実際は新しいレンズのほうがニュートラルの発色なのだろうが。

この50mmレンズの発色が非常にクールで、コントラストが強く出るという事だろう。

管理人は最近のレンズの発色よりも、この渋くクールな発色が好きなのだ。


写真は見たまんまの発色よりも、多少味付けしたほうが味わい深くなったりする。



Ai50mmf1.2s with D3

D3に50mmf1.2と取り付けた様子



古いカメラだけど、ニコンD3との組み合わせでこのレンズで撮るのが非常に楽しい。

オールドレンズと1200万画素の組み合わせ、非常に相性が良い。

D3との相性が良いようで、深いボケ実とともに味わい深く写ってくれる。

D3はスクリーンが優秀で非常にピントの山もつかみやすいので、MFでもピントがバシバシと決まる。

D3のスクリーン内に液晶が入っていないのも大きいのだろう。


液晶が入っているからなのか、D800Eだと殆どマニュアルでのピント合わせが決まらない。

スクリーンのピント面も厳密に精度が出ていないのも原因のようだ。

(D850ではかなり改善され、ピントの山がつかみやすくなった。)


7、フォーカスリング、絞りリング


古いマニュアルレンズの殆どがそうであるように、このレンズも同様にフォーカスリングの動きがしっとり滑らかに動いてくれるので、動画、写真を問わずマニュアルでのピント合わせをスムーズに行なう事が出来る。

リングの操作音も全くといっていいほど発生しないので、動画でも安心して使える。

絞りリングが付いているので、絞りの調節は、指の感覚で素早く直感的に操作する事が出来る。この操作、慣れると絞り値の数字を見なくても思った数字を素早く設定出来るようになる。

開放から半段、一段二段三段、1.2、1.422.84といった具合。露出計に表示される絞り値を確認しながらダイヤルをぐりぐりするのとは段違いの操作のしやすさである。

なおかつ、1/2や1/3刻みも無く、完全なアナログ操作、さらに微妙に空けたり閉じたりも自由自在。慣れてくると撮影時に設定したい絞り値に指が自然に動くようになってくる。


さらに動画では、撮影中に絞りリングの操作スピードも自由自在に操れる。



8、レンズの作り込み


最後に、特に好感を感じる点はレンズの作りこみと仕上げの良さ

全てのニコンAiマニュアルレンズがそうであるように、しっかりと高い精度で作られた金属ボディ、フォーカスリングの程よいストロークとしっとりとした滑らかな動き。距離目盛、絞り値そして型番とシリアル番号、全て掘り込みの上に見やすく色分けされた塗装、など等である。


本体の黒い塗装に関しても長年使っていてもなかなか剥げない、非常に高品質の塗装がされている。



Ai50mm f1.2s 物理的限界まで径を取った後玉

極限まで口径を大きくしてある後玉



このニコン50mmf1.2は道具として十分な性能を持ちながら、物として、職人気質を感じる工芸品のような魅力を秘めた逸品のレンズだと感じる。


f1.2にするための工夫、上の写真を見ていただければ解かる通り、後端のレンズが物理的限界、の可能な限り大きくしてある。後玉レンズを囲う金属部品、1mmにも満たないその薄さ!よくも製品化させたと関心してしまう。(左下のつめは、シグマSD15で使うため削ってある。)

そしてこのレンズは現行品として今だに購入出来る状態、買う事は無くとも、こういった逸品が今でも生産されている事にうれしさを感じる。


もし量販店などでカメラのレンズを見る機会があったら、ぜひともこの50mm f/1.2を手にとってみてほしい。

新しいレンズでは感じられないずっしりとした魅力を感じる事が出来るだろう。



9、最後に


50mmという焦点距離、対角45度の標準レンズというだけあって、被写体を自然な感じで表現してくれる。主要被写体と背景そして手前と遠近感がちょうどいい。

絞りの選択範囲がf1.2からと広く、その絞り値によって写真の雰囲気はがらっと変化する。


その表現の幅はf2.8の標準ズームレンズよりも大きく感じる。


管理人自身撮影に出かける時、持って出かけるレンズ、AF24-70mmf2.8のズームにするかこの50mmf1.2にするかよく迷う事がある。


短焦点のマニュアルフォーカス、オートフォーカスのズームレンズと比べると撮影時の集中力がまるっきり違う。

撮影する前から、強いイメージが浮かんで来る上、レンズの明るさも相まって、撮れる写真の結果も良くなる事が多い。


以前、赤道ギニアへ、看護師を取材に行った時は、ズームレンズではなくこの50mmf1.2を使用した。被写体を印象的に描写、その選択は正解だった。


写真撮影で最も基本的な操作の「ピント合わせ」、今ではその操作のほとんどが自動化されオートフォーカスにまかせっきりの場合がほとんど。

誰もが簡単にピントの合ったシャープな写真を撮る事が出来る時代になった。


バシバシピントが合った写真が量産出来るのは爽快なのは否定出来ないが、どうも味気なく、撮る事に対してあまり面白味も感じない。

そんな誰もが簡単に出来る事に、やりがいを感じず、やっても面白みは半減だろう。


もし写真をより楽しみたいのであれば、いったん原点に戻ってマニュアルレンズで自分でファインダーをのぞいて指先でピント合わせて写真を撮ってみる事をオススメする。


オート任せでは見えていなかった被写体の細かな表情が見えてきたり、さらにはその動きも、自ら読めるようになったり、新しい写真のイメージが湧いてくるかもしれない。


撮影時に、カメラの設定、オートフォーカスモードやら、フォーカスエリアやらから開放されて、ファインダースクリーン上、いつでもどこでも、思いのままにピントを合わせる事が出来てしまうので、逆に爽快だったりする。

絞りリングでの絞りの設定も、また然りである。


そして、一枚一枚じっくりとシャッターを切る事によって、写真の一枚の重み、そして撮影する楽しさもより一層感じられる事だろう。



 

この、「岩本貴志の勝手気ままブログ」全く更新もせず月日ばかりが流れてしまいました。とりあえず何かを書かなければと今回その何かを書き始め、書いてみるとこんな文章が出来上がりました。


これを機会に今まで使用したカメラ機材や、車、そのほか何でも、自分勝手な視線で、それぞれのうんちくを横道にそれながらも語っていければと思っております。他にも、頭の中ではいろいろな構想は浮かんできているので、今後形に出来れば良いなと思っております。



2020年5月、大きく加筆修正、写真を添付しました。


しばらくD800Eをメインとして使っていましたが、今年からD850にメインのバトンを引き渡そうとしているところです。


このブログに記載されている内容は全て管理人の独断と偏見であり、真実とかけ離れている事も多々ある事をご了承下さい。

そんな風に感じる人もいるんだな!、こんな変人もいるんだな!といった具合で見てくれるのがちょうどいいと思います。







 

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