前回サンニッパについてお届けしたので、今回は300mmf4、通称サンヨンについてお届けします。
ニコンの最新のサンヨン、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRにはPF、位相フレネレルンズを使用した超小型レンズが出ていますが、
今回のブログで取り上げるのはニコン 旧サンヨン、一世代前のちょっと古いモデルの御紹介になります。
前といってもまだ、現行のモデルです(2020年)。
コンテンツ
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1、何本も使ってきた300mmレンズ
初めは望遠鏡を望遠レンズとして使用していた
300mmレンズ、筆者自身、何本も使ってきた。
野生動物や、野鳥など自然ものを撮る身としては、300mmレンズは標準レンズ的存在。
それが、300mmを何本も使ってきた理由。
ニコンを使うようになって早々に購入したのがAF Nikkor ED300mmf4S、これはさらに世代を遡り2世代前のサンヨン。
こちらのレンズ、このブログでは旧旧サンヨンと表現する事にする。
この旧旧サンヨンを購入したのは今から、何年前だろう?まだ学生だったころ、たしか1992年。
それまで望遠レンズとして望遠鏡を使用していた。星好きだったので天体望遠鏡を所有していたのだ。
ペンタックスの口径75mmの天体望遠鏡、EDHF75を500mmの望遠レンズとして使用していた。
口径75mm、明るさはf6.7、レンズ構成は2群3枚。
この望遠鏡、レンズは2群という事で反射面は4面しかない。
更に透過率の高いスーパーマルチコートと相まって、抜群の抜けの良さだったのを覚えている。
当時テレビのカメラアシスタントなどしていた筆者は、動物奇想天外の大雪山ロケでヒグマ探しに使用。番組でもヒグマを見つけたシーンが使われた。
大雪山に3ヵ月こもった事を思い出す、思い出の望遠鏡レンズでもある。
写りのぬけに関しては、レンズを多数使用している旧旧サンヨンはこのペンタックスの望遠鏡に負けてしまっていた。
旧旧サンヨンは、前面の保護フィルターと、後部差込フィルターだけで既に2群、それにレンズ本群たちが加わるので、ぬけでかなうはずは無かった。
望遠レンズとしての圧倒的な使い勝手の良さ
ただ、ペンタックスの望遠鏡の重量2.5キログラムに対して、旧サンヨンの1.3キログラムというそのコンパクトさ。
望遠鏡のF6.7に対してF4と明るく、自由に設定出来る絞りと、最短撮影距離の短さ(望遠鏡と比べて)、カメラレンズとしては望遠鏡とは比べようも無い操作性の良さ。
当然の事ながら、カメラの望遠レンズとしてのその使い勝手、旧旧サンヨンに軍配が上がるのであった。
カメラ用に設計されたレンズ、当たり前といえば当たり前だが。
最短撮影距離2.5メートルだったニコン、旧旧サンヨン
この旧旧サンヨン、最短撮影距離が2.5mと今時レンズとしては若干遠いので、小さなリスのアップの撮影などでは物足りなく、中間リングを使ったりしていた。
中間リングを使うと、近くまで撮れるようになるのはいいのだが、遠くにピントが合わなくなってしまう。
いざ、遠くで思いがけないシャッターチャンスが巡ってきても、中間リングをはずす間、そんなシャッターチャンスは逃げていってしまうのであった。
それでも天体望遠鏡の中間リングを付けても5メートル弱までしか寄れなかったのと比べると、ずっと良かった。
オートフォーカスモーターが組み込まれていなかった旧旧サンヨン
旧旧サンヨンのオートフォーカスはカメラボディー内モーターをギアで繋げて駆動する仕組み。
駆動速度は最近の超音波モーターのものと比べ、遅かったが。
それ以上に、当時のオートフォーカスの精度、マニュアルでピントが合わせたいシーンが多々発生していた事実。
その都度、オートフォーカススイッチを切り替えなければならなかった。
という事で、ほとんどの場合マニュアルで撮影していた。
待望の超音波モーター搭載、ニコン 旧サンヨン
1996年、ニコンからF5が発売されて、超音波モーターを使用したレンズが出てきたりと、ニコンのカメラもオートフォーカスがそれなりに使えるようになった。
EOSシステムに移行してから100%レンズ内モーター駆動を採用しているキャノンに対して、大きく溝を開けられていたニコン。
ボディ内モーターを使用して、レンズ内のオートフォーカスを駆動させる、ギア駆動の旧旧サンヨン、オートフォーカスのスピードの点でキャノン勢にますます大きな差を空けられていたのだ。
そんなこんなで、管理人自身も何度キャノンに乗り換えようと思った事か。
それまでニコンのオートフォーカスは、おまけ的存在だった感があった。
筆者的に悪い意味でなく、ファインダースクリーンでのピントの山が非常につかみやすく、オートフォーカスを使うまでもないほどしっかりしたカメラだった。
ニコンユーザーが長年待望していたレンズ内超音波モーター内蔵のサンヨン、Ai AF-S NIKKOR 300mm f/4D IF-EDが発売されたのは2000年10月の事。
サンニッパに関しては、1996年のF5の発売と同時に超音波モーターが内臓された新しいものが出ていた。
それから4年遅れで登場した事になる。
2、最強の操作性フルタイムマニュアル
オートフォーカスの駆動用にレンズ内部に超音波モーターが内蔵され、カメラ内モーターの回転を伝達させる旧旧サンヨンと比べるとフォーカスのスピードは非常に速くなった。
その変化は非常に大きく、比べると爆速といってもいい程。
手でどんなに速くフォーカスリングを回すのよりも、ずっと速く動くのだ。
それもコントロールされながら。
そのスピードで、フォーカス位置ではビシッと止まる。
それだけAFのスピードが速くなると、多くの被写体で、マニュアルよりも、オートフォーカスの方が断然有利になってくる。
さらに、特筆すべき向上した操作系のひとつに、フルタイムマニュアルがある。オートフォーカス中いつでもマニュアルで操作できる機能だ。
このフルタイムマニュアルの操作系が何とも、使いやすい。
オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えせずとも、撮影中いつでもマニュアルで操作出来てしまう。
撮影中にオートフォーカス切り替えスイッチをいじくっていたら、野生動物や、野鳥などのだと、シャッターチャンスは逃げていってしまう。
3、レンズのスイッチ類
レンズ構成は、EDレンズを2枚使用した6群10枚。6群と少なくまとめられている。
コーティングも良くなり、内面の遮光処理も良くなったようにみえ、旧旧サンヨンと比べてもぬけが良くなった。
フレア等も出にくくなったのが、ファインダーを覗いても分かるほど。
防塵防滴構造ではないが、密閉性も以前よりも良くなり、旧旧サンヨンと比べ埃なども入りにくくなった。
レンズには2つのスイッチ、
フォーカス関連のスイッチが2個、レンズ左側についている
M/AとMの切り替えスイッチ。
サンニッパに付いている、A(オートフォーカス)のみの、マニュアルで操作を出来なくする設定は無い。
もう一つのスイッチは、撮影距離、FUllと∞-3mの切り替えスイッチ。
この距離切り替えスイッチは結構使う。
一般的撮影は3m以遠、∞−3mの設定にしておいた方が都合がいい。
望遠撮影、例えば野鳥など3メートルより近くで撮影出来る機会はそうそう無い。
シンプルで、必要十分の設定スイッチ類。
フォーカス情報は、プラスチックの窓越しに見る事が出来る。
この目盛り、結構重宝する。
このレンズの場合は、パンフォーカスする事は無いが、フラッシュ撮影のその到達距離、発光量ガイドナンバーが割り出せる。
あとは天体の撮影、三脚に据え付けてのマニュアル撮影の時、結構フォーカスの現状確認に使ったりする。
ただ、カメラ側から覗き込むと、M(メートル)側の数字が隠れて見づらい。
4、重宝する最短撮影距離1.45メートル!
最短撮影距離1.45メートル
このレンズの特筆すべきもう一つの点は、その最短撮影距離が1.45メートルと今までの旧旧サンヨンの2.5メートルを圧倒する短さ。
さらに、最短撮影距離まで、開放から使える画質の高さ!
寄っても撮影倍率が上がらず、大きく撮れないレンズが結構ある中、このレンズは結構大きく撮れる!
だから、マクロレンズ的にも使える。
中間リング、クローズアップレンズを必要とする事はほとんど無いだろう。
最短1.45メートルがどれだけ寄れるか分かりやすくなるように、下に最短撮影距離で撮影した2枚の写真を掲載した。
最短撮影距離開放での先代F3と50mmf1.2をモデルにしての撮影。
まずは、サンニッパを使って最短撮影距離2.5メートルで撮影。
旧旧サンヨンもこれぐらいの大きさだという事。
リスなどの小動物ではちょっと物足りない事が分かる。
AF Nikkor ED 300mm f2.8D最短撮影距離、2.5メートル開放で撮影
300mmで2.5メートル、
これぐらいだと、小動物を撮影する際、寄りが物足りないと感じる事も度々発生する。
そして下がサンヨン最短撮影距離1.45メートル。
Ai AF-S NIKKOR 300mm f/4D IF-ED最短撮影距離1.45メートル開放で撮影
上の写真を見てもらえば一目瞭然、2.5メートルの撮影距離と比べると、圧倒的な近接能力だという事が分かる。
5、最短撮影距離でも開放から十分使える程の高画質
50mmf1.2レンズの塗装の質感も伝わってくる、短焦点らしいキリリとした写り。
ボケも短焦点らしく素直でクセが無く、カメラ本体、F3Tの文字もきれいに自然にボケてくれている。
50mmf1.2のフィルター径は52mm。
推定するに、長辺13センチメートルぐらいの範囲が画面に収まっている。
撮影倍率は最大1:3.6。
ピクセル等倍まで出してみると
上の写真をピクセル等倍に、600x900ピクセルの範囲をクロップして出してみた。
若干の甘さは見えるが開放でこれだけ出てくれれば、最短開放で十分に使える。
花や、動物、人物などを撮るのであれば、若干の甘さが残っていたほうが柔らかく美しく写ってくれる場合が多い。
MTFの特性は、高周波30本では新VR,PFサンヨンに負けるが、低周波の10本では旧サンヨンが周辺部で上をいく。
とにかく画面の端の端まで若干の柔らかさを残しながら非常にフラットに出てくれる。
MTF曲線は嘘で無さそうだ。
半段絞るだけで、画面全体が引き締まる。
6、サンヨンを選ぶ時
サンニッパと比べると半分以下の重量と、コンパクトさ。
このレンズを使うのは、サンニッパが使えない時というか、サンニッパを使うのが大変で、機動力が必要な時。
それでいて高画質で切れのある写真が必要な時。
他にも、サンヨンを使うメリットがある。
サンヨンを使う他の理由は、
最短撮影距離が必要な時
サンニッパだと干渉してしまう鉄格子越しに何か撮る時
フィルターワークを使う時、手持ちの77mmフィルターが使える
太陽などの撮影で、大きく減光が必要な時
等だ
国外遠征や、特に山に登ったりする時にそのコンパクトさ、機動性の高さは非常に重宝する。
テレコンバーターと、このサンヨンを持っていれば、結構野生動物や、野鳥撮影に対応出来てしまう。
下はエチオピア、シミアンマウンテンで撮影したもの。
アフリカ北部、高地にのみ生息するヒゲワシ
シミアンマウンテンは、エチオピア北部に位置し、世界遺産にも登録されている高地だ。
このヒゲワシ、崖の上を歩く筆者の様子を見に来たのだろう。
上空を低く一回りすると、崖を昇る上昇気流を利用しながら颯爽と上空へと飛んで行き、すぐに見えなくなった。
超音波モーターが採用され、オートフォーカスのスピードが速いので、上のようなとっさの出来事でも十二分に対応出来る。
万が一、ピントが合わなかった場合のフルタイムマニュアルも重宝する。
フォーカスのストロークは十分長く、マニュアルでの操作も非常にやりやすい。
アフリカコゲラの夫婦
上のような条件、ファインダースクリーンのいいカメラであれば、一旦オートフォーカスでピントを合わせてからスイッチを切り替える事無くマニュアルフォーカスで撮影。
マニュアルフォーカスは、AFのフォーカスエリアをいじくるよりも、素早く画面のどこにでもピントが合わせられる。
7、重宝するフィルター径77mm
それと、使用上重宝するのがフィルター径77mm。
旧旧サンヨンのフィルター径は82mmもしくは39mmで、フィルターワークを使う事は殆どなかった。
レンズ一本のために、費用対効果の事を考えると、なかなかフィルターを購入するのはためらってしまう。
口径が大きい分値段も高いし。
さらに、荷物が余計に増える事になってしまう。
フィルター径77mmは、今までの第三元24-70mmf2.8と70-200mmf2.8と同じフィルターサイズ。
だから、すでに手元に豊富にあるフィルターが無駄なく使えるのだ。
8、旧サンヨン、レンズの欠点
いう事無しの優秀なレンズといいたいところだが、このレンズには、欠陥といえるほどの非常に大きな欠点がある。
簡単にたわむ、ひ弱な三脚座
その欠点は三脚座、回転し取り外す事も出来る仕組み。
この三脚座の作りが非常に弱く、強固な三脚と雲台を使おうとも、シャッター速度が遅くなると簡単にブレてしまう。
手で触って、ちょっと力を加えて触ってみれば、たわむのが分かるほどに貧弱だ。
だから、三脚を使用する場合、バランスが前重心になってしまっても、あえてカメラに三脚を取り付けたほうがブレの発生が少なくなる。
そうした場合、前重心になりバランスが非常に悪くなるので、上下ティルトがしっかりと固定出来る雲台が必要になってくる。
旧旧サンヨンの三脚座は短かったので、そんなことは無かったのだが。
軽量化を達成するための肉薄化、さらに指が入る高さをつけ、欲張った結果が・・・
指が三脚座の間に入るように長くしてあるのはいいのだが、軽量化のためか三脚座を肉薄にしすぎてしまったようだ。
ユーザーのわがままを取り入れてか、社内おエラいさんの意見をとりいれてか、妥協の結果、使えないブレる三脚座を作り出してしまったように思われる。
勝手な憶測だが、技術側は猛反発した事だろう。
妄想ばかりですいません。
9、まとめ
サンヨンはサンニッパと比べればレンズが非常にコンパクト、手軽に手持ちで撮れるレンズ。
ただ、その手軽さと相まって写真をビシッと決めるのは案外難しい。
その事に注意して撮れば、傑作写真が手軽に撮れるレンズではあるが。
しっかりとブレずに決めるには三脚が必要になるのだが、このレンズ、貧素な三脚座があだとなってしまう。
ブレを防止するために三脚を使っても、前途した通り、三脚座の弱さからブレてしまう
レンズが非の付け所が無く、非常に高性能なのにもかかわらず、三脚座の作りが弱いのは非常に残念だ。
新PFVRサンヨン、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
さらに大きく軽量化とコンパクト化がなされた最新レンズ。
位相フレネルレンズと、VRレンズを組み合わせた300mm。
手振れ補正も4.5段、これにはなかなか魅力を感じる。
この手振れ補正の数字も、どうやって算出しているのか、あまりあてにしていないが、結構使えそうだ。
レンズも軽くコンパクトなので、三脚座の必要性も無いだろう。
せっかくコンパクトに撮影をしようと、サンヨンを使ってもブレないよう三脚を使い、荷物が増えてしまっては、本末転倒だ。
そして三脚を使ったにもかかわらず、三脚座が貧素でブレてしまうのでは、何のための三脚なのか、更にいただけない。
そんなレンズに対しての、手振れ補正を搭載した新サンヨン、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRに、ますます魅力を感じる。
ただ、フレネルレンズの特性はいかがなものだろうか?
使った事が無いのでなんともいえないが、レンズ表面に同心円状にリング状のエッジが立つわけなので、どうも逆光には弱い気がしてならない。
ま、それを生かした作品に仕上げればいいわけだが。
サンニッパではあまり必要と感じない手振れ補正であるが、手軽に撮影するためのサンヨン、手振れ補正の重要性は結構感じる。
いずれにせよ、写りに関してはほとんどいう事の無いこのサンヨン、AF-S NIKKOR 300mm f/4D IF-ED、今後まだまだ使っていく事だろう。
三脚座以外、このレンズは文句無しの出来栄えの非常に優れたレンズに違いない。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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