画面真ん中ちょっと左上の青い光芒が、ネオワイズ彗星 8月1日
今回は太陽、そして地球からどんどんと遠ざかっていく、ネオワイズ彗星について、ナイロビからも観測出来たので取り上げます。
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7月3日に近日点を通過し、少しずつ太陽から遠ざかっていく彗星、ネオワイズ彗星
ものすごい長大な楕円軌道を周回していて、次回のお目見えは6000年以上先の未来。
今回太陽系の果てから3000年以上かけて、太陽の重力に引っ張られ少しずつ加速してやってきた。
7月3日の近日点通過時、速度は最高速に達し、この勢いで再び3000年の時をかけて、太陽から遠ざかり、再び戻ってくるという。
それにしても、いろんな彗星があるものだ。
彗星は、夜空をにぎわす流星の素、そんな星くずを軌道上に撒き散らす。
また、生命の素となったアミノ酸を地球に持ち込んだとも考えられている。
軌道を周回する生命の素カプセルのようなものだろうか、地球の生命起源の鍵となった天体ともいえそうだ。
このネオワイズ彗星は、今年3月にアメリカの人工衛星によって見つけられた。
この人工衛星(赤外線天文衛星)の名前が「ネオワイズ」、その名にちなんで、ネオワイズ彗星と呼ばれるが、正式な名前はC/2020 F3、読みづらい上、愛着が湧くような名前ではないな。
ネオワイズといわれるわけだ。
今後は、人工衛星による新彗星の発見が、増えていく事になるのだろう。
管理人が初めてアフリカに来るちょっと前の1996年、百武彗星がやって来た。
長い尾を伸ばした彗星の様子、肉眼でもよく見えたのが思い出される。
当時ひとりで車に乗って、渡良瀬遊水地まで彗星を見に行ったのを思い出す。
彗星の放つ淡い青色はとても美しかった、今でもそんな印象を強く持っている。
管理人自身、彗星を観測するのはそれ以来の事。
せっかくなので、D850で初めて撮った夜空の写真、D800Eとも写りを比べてみた。
8月、彗星は見えるのかな?
7月の間、ナイロビはほとんど晴れることが無く、管理人自身、観測出来なかったネオワイズ彗星。
ま、もっと早く知っていれば観測できたかもしれないが。
7月も終わりに近づくと、まれにではあるが晴れ間が覗くようになって来た。
彗星の場所がいまいち把握出来ていないので、まずはシュミレート。
Wikipediaにて得たネオワイズ彗星の軌道データを天文シュミレーとソフト、ステラナビゲーター95に入れて、シュミレーションしてみた。
日食タイムラプス撮影でも活躍した、25年前のソフトだ。
インターネットを切って、ウィンドウズXPモードで立ち上げなければならないなど、めんどくさい事もあるが、軌道計算など、今まで不足は感じた事は無い。
別に美しいグラフィックが特に必要というわけでは無いのと、どこまで使えるか遣い倒すつもりでもいる。
ウインドウズ95の時代のデザイン、今見ると新鮮でクールだ。
このソフトの作動には、XPモードの上、更に互換性モードWindows95を使う。
PCに負担をかけるような余計な機能が無く、いろいろと、一つの画面で全て設定出来てしまう。
そういえば、ウインドウズ95の時代のワードやエクセル、ものすごくサクサク動いていたと思い出す。
当時のCPU、ペンティアム1、クロック周波数150MHz程度シングルコア。メモリーも128MBもあれば大容量だった時代。それで十分だったのだ。
文書くだけなのに、最近はハイスペックマシンでも、なぜか当時よりもったりと動くのである。
当時のソフトのデザインは今と違って、純粋に使いやすさを追求していたものが多かったと感じる。
それと比べて最近のアプリ、内容は大したものでないのにグラフィックでごまかす傾向が強いなと。
過去の純粋さは消えてしまい、腹黒くなってしまったと、人にも通ずるようだなと感じるのである。
必要な軌道データを入れ込んだ
インターネットで公開されている軌道データーをシュミレーターに入れた。
軌道データ以外は適当に設定。
この数値を入れる事によって、何時どこで彗星がどう見えるかが詳しく分かる。
さらに、尾のたなびく方向も、イオンと、ダスト別にシユミレート出来る。
これで、太陽系の中を太陽に近づき、再び遠ざかっていくネオワイズ彗星の軌道と地球からの大体の見え方は見当が付いた。
おおぐま座から、移動して今はかみのけ座にいるという事。
さて、カメラで捕らえる事が出来るだろうか?
ナイロビからみると、かみのけ座は日が沈む頃には西の空、地平線から40度ほど上。
ちょうど牛飼い座の一等星アルクトゥルスの真下のようだ。
観測方法
現在、今回の観測地ケニアでは、コロナウイルスの影響で、21時以降の外出が禁止されている。
だから、夜間空の暗い、光害に汚染されていない郊外に出かける事が出来ない。
という事で、家から観測するしかないが、アパートの屋上からでは西の空が開けていないので観測は無理。
部屋の小さな窓から観察出来ないかと、彗星が見えると思われる方向に方位磁石で方向と、高さの角度を合わせてみると、その方角はラッキーな事に開けていた。
ただその方角には邪魔になりそうな一本の木、遠くの建物の陰に消えるずっと前に、この木の陰に隠れてしまいそうだが、何とか観測は出来そうだ。
観測出来る事が分かったところで、部屋の窓近くに、ケンコー・トキナー製スカイメモTを据付けた。
撮影はこんな感じで行なった、もちろん電気は消して
このスカイメモT、操作は全てスマホにてワイヤレスで操作する。
極軸は、方位磁石で大体の方角を合わせ、角度はスマホアプリで合わせた。
建物の鉄筋類、結構磁気を帯びていて正確な北が導き出せない。
ここナイロビは南緯1度ほど、見晴らしの効く外に出ようとも、北極星は見えず、なおかつはちぶんぎ座の4つの星も見えない。
赤道に近い地域で、赤道儀の極軸を合わせるのは非常に難しいのだ。
その事については、そのうち書こうと思う。
時々日本に帰って、北極星のおかげで非常に簡単に、なおかつ超精密に赤道儀の据付が出来てしまう事に、とても感激するのである。
彗星の撮影に使うレンズは、85mmf1.8、180mmf2.8、300mmf4と順につめていった。
東京よりはましといえども、ここはケニアの首都ナイロビ、光害は厳しい。
最近は街灯が増え、空はくすんできている。
夜空を眺めても、じっと目を凝らしてもやっと3~4等星が見えるかどうかの条件。
パッと見では2等星ぐらいまでしか見えない。
ナイロビの空も20年前には天の川を見る事が出来たのだが、最近の星を見る条件は非常に悪くなったのが現状だ。
こんな条件化では、とても暗くなりつつある彗星を肉眼で見つけるのは無理そうだ。
肉眼では見えずとも、写真で撮れば、こんな条件下でも結構暗い星まで写ってくれるはず。
という事で、まずは彗星の捜索に、D850に85mmf1.8レンズを装着、撮影を開始した。
画角の広い85mmで大体の方角だけ合わせて何枚か撮影して捜索する事によって、明らかに他の星星とは違う、青い光芒を広げる彗星の姿が視野に収まった。
写真下が、85mmレンズで最初に捕らえた彗星。
そして、この下に写っている木が、先ほどいった邪魔な木。
観測に費やせる時間もあまり残ってなさそうだ。
彗星を見つけた
既にこの彗星、見納めの時期だが、尾は見えないものの彗星の美しく青い光芒が85mmレンズでも認められた。
空も急激に暗くなっていく。
彗星が木の陰に隠れる前に全て撮影しなければと、すぐに180mmに交換し焦点を彗星に合わせた。
上の写真、D850で撮ったのだが、ISO400にもかかわらず等倍にするとノイズが厳しい。
「はて!?」、D850星空は苦手?なのかな???
という事で、当初は全て、D850で撮影する予定だったが、確実に写るD800Eでも共に撮影する事にした。
彗星が木に隠れるまで、あわただしく、カメラとレンズをとっかえひっ変えしての撮影。
まだ薄明も終わっていないので比較にならないが、D800EとD850の比較
木に隠れる前、まだ暗くなりきる前に撮影した。
D800Eのほうが、ノイズが少なくシャドー部のトーンがよりよく表現されている。
この時間帯、12分の撮影時間の違いは、薄明も大きく変化するのでなんともいえない。
ここで、カメラのシャッターショックの様子が捕らえられたので、その事について。
D800Eで撮影している途中、おそらく人工衛星が彗星の近くを横切った。
写真左の軌跡がそれである。
もしかしたら、ペルセウス流星群の流れ星の可能性もある。
肉眼では見ていないので、定かでない。
軌跡の状態から、おそらく人工衛星だと思う。
太陽が沈んで間もない時間帯、人工衛星の最も明るく見える時間帯。きっと衛星のパネルの反射が上手く太陽の光をこちらに向けて反射させのだろう。
明るい光を放ち、露出10秒の間、画面を下か上へ向けて横切った。
その軌跡に、D800Eのシャッターショックの様子がきれいに捉えられたので、その部分を拡大表示。
振動が減衰するまでおおよそ1秒かかっている。
100パーセント定かでないのだが、ミラーアップ機能はこの時は入れていたはず。
三脚や架台が強固なものであれば、この減衰の様子ももっと小さく速く収束していくものと思われる。
D850のライブビューを使用した無音撮影、ミラーはもちろんの事、機械シャッターも作動させないので、全く振動を発生させずに撮影出来てしまう。
こんな天体撮影では非常にありがたい機能だ。
今回、D850は、その機能を使って撮影している。
300mmレンズで、D850、D800Eの対決
そして薄明も終わり、空も完全に暗くなったところで、300mmでの撮影。
D800EとD850、星空撮影の向き不向きが分かる時が来た!
出力写真はD800Eをピクセル等倍にして900x600にクロップ、D850の画像はD800Eと同領域が入るよう若干縮めて掲載した。
そして、どちらの写真も、みてくれが大体同じになるようにトーンカーブで、トーンを整えた。
追尾が決まっていないのはご愛嬌という事で、ご勘弁を。
D800E ピクセル等倍
2012年発売のD800Eで撮った画像。
光芒が結構大きく広がっている様子が分かる。
芯からの微妙な濃淡も出ている。
D850、上の写真と同サイズになるよう調整、追尾が決まったのに!?
光芒の広がりが、D800Eと比べると小さい。
彗星の芯も眠く見え、メリハリが薄まって見える。
色情報もD850のほうがD800Eと比べて薄まって見える。
下のD850の写真は、うまく追尾されているのに対し、D800Eは追尾が上手くいかず、ブレている。
像がブレ、条件的には悪いはずの上のD800Eで撮影した写真のほうが、彗星の核の様子、そしてそこから広がる光芒、その濃淡が下のD850で撮影したものより、豊かに再現されている。
光芒の広がり自体も、D800Eの方が淡く大きく広がっている。
あれれれれ?D800Eのほうがトーンも、解像度も良さそうだ。
D800Eに負けてしまったD850
今回の彗星の撮影による比較テスト、どうもD800Eにその軍配があがりそうだ。
今回の撮影条件、カメラ設定では、天体、彗星や星雲のような、淡い濃淡の再現を忠実に出すには4500万画素のD850よりも、画素数3600万画素のD800Eのほうが、ノイズが少なく微妙なトーンまで再現される事が分かった。
まだ、いろいろと設定の変更が出来るので、最終的な結論とはいえないが。
今回の撮影では、その写りの差は、D800Eのほうが上に感じた。
こういった濃度の淡いものを出すには、センサーそのものの性能が非常に重要で、エンジンでごまかそうにも、そううまくごまかせるものでもない。
その原因が、画素数を上げたからなのか、センサーメーカーの特性なのか、エンジンのせいなのかは分からない。
いろいろと設定を変更して、最も星空が良く写る設定を見つけ出そうと思う。
それを全て試してから、最終的な結論という事になるだろう。
1200万画素のD3から、3600万画素のD800Eになった時、画素数が3倍にも増えたのにもかかわらず、高感度特性や、天体などシャドー部の微妙な濃淡も出るようになった事について心底驚いた。
たった2分の露出で、コンポジットする事も無くこれだけのトーンを出すD800E
上の写真を見てもらえばわかる通り、D800Eの恐るべきシャドー部の描写能力。
3600万画素という高画素でこの描写をこなしてしまう。
長秒時ノイズリダクションは使っていない。
ローパスを打ち消す仕組みで、ローパスフィルタを使ったカメラと比べると、その解像感はまるっきり違ったもの。
実質の写真1枚の総合した情報量はD3の5~8倍もあるんじゃないかと思ったほどだ。
D850は、シーモスセンサーの裏面照射やらで効率よく光を受ける仕組みをとったと聞いて、シャドー部の写りはD800と比べて大きく向上したものと結構期待していたのだが。
期待を裏切られた感じだ。
逆に画素数が増えた事によってノイズが増え、シャドー部のトーンが薄れてしまったようにも見える。
ノイズが増えた事によって、画素数が増えたにもかかわらず、写真全体の情報量は減ったように感じてしまった。
3600万画素と4500万画素、その差は長さの比率にしてたったの12パーセント。
画素数増加による恩恵はそんなに得られそうに思えない。
まだ、初めての星空の撮影なので、実際のところどうなのかこれから探っていこうと思う。
今回、D850で感度とノイズの設定を分けても撮ったので、その事についてはそのうち取り上げる事とする。
D810 とD850のニコンの作例、カタログを含めD810 の作例の方が解像感、立体感を感じるのはそれが原因のようだ。
D810はノイズが少ない分、ノイズリダクションなど行なわずともシャドーまで諧調飛びも無くしっかりとトーンを出してくれる。
まとめ
彗星の事を書こうと書き始めたが、カメラの比較記事になってしまった。
とりあえず、彗星に話を戻すとして。
これから太陽そして地球からどんどん遠ざかっていくこのネオワイズ彗星、その様子はカメラに写らなくなるまで続けようと思っている。
家の窓から撮影できるので、結構手軽な撮影だ。
次回はどんな彗星が現れるのだろうか?
百武彗星を越えるような彗星が見えたらいいな!
こんな瞬間も、まだ誰も見た事のない数多くの彗星が、太陽の重力によって加速しながら飛んできている事だろう。
でも、地球にぶつかる事だけは避けて欲しいけれど。
そういえば、1994年だったかシューメーカーレビー第9彗星が木星に衝突したな。
残念ながら、そのぶつかる瞬間は地球から見えない木星の裏側だったのだが。
この彗星は衝突する前に既に木星の重力で粉々にいくつにも分裂した後、木星に衝突していった。
当時管理人は動物奇想天外というTBSの番組のロケで北海道の大雪山にこもっていた。
その衝突の瞬間は、山頂ではないがトムラウシ山のどこかからか、双眼鏡でひとり木星を眺めていた。
見えない木星の裏側で、「今衝突した!かな?」とかいって。
その衝突の衝撃は予測していた以上に激しかったそうな。
衝突の瞬間の閃光の輝きは裏側にある木星の衛星の表面に反射し、その明るさが推測出来たそうだ。
その後木星の雲にきのこ雲を形成、しばらく小型望遠鏡でも観測できるほどのシミが木星表面で見られた。
そんな彗星が、もし地球に衝突でもしたら、地球上の生物大きな振り出しに戻ってしまうのかな?
生命リセッション。
人類は生き延び、文明は残るだろうか?
今度はどんな生命が繁栄するのだろう?
再び文明を持つような生命は現われるだろうか?
そんな未来、今の人類の生きていた証拠は何か残るだろうか?
なんか、今でも過去の遺跡として残っているエジプトのピラミッドぐらいしか残らない気もしてしまう。
そんな事は起こって欲しくないが、妄想ばかりがひろがっていく。
今回はここら辺で。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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