かなり細部まで浮かび上がった木星 右下の隅に大赤斑が見える
アフリカと日本を股にかけて活動するカメラマンのブログにようこそ。
星好きでもある管理人、なるべくお金を掛けず、手元にある、ありあわせの機材を使い、天体の撮影を行なっています。
以前サンニッパでの惑星撮影をご紹介しましたので、今回はその第二段として、ゴーヨン(500mmf4)での惑星撮影についてご紹介します。
惑星の撮り方のひとつ、こんなやり方もあるんだと、読んでいただければ幸いです。
今年2020年、7月後半、明け方の空には、水星から、海王星までの全ての惑星が勢ぞろい。
秋には、火星が地球への準大接近。前回2018年の大接近の9割ほどの大きさで見られます。
そして、年末の12月21日には、木星と土星が見かけ上、超の付くほどの大接近と、惑星イベント目白押し。
2020は、惑星の当たり年。
さらには、巨大惑星の木星が、土星を追い越していく、太陽系惑星、節目の年にあたります。
太陽活動の低迷と、惑星の節目の年が重なり、人類の経済活動も、なぜかそれと呼応するかのように大きな変化の時を迎えているように見えます。
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木星と土星のランデブー
今年2020年は惑星の当たり年。
年始から年末まで、夜空にはほぼ1年中、木星と土星の姿が見られます。
その2つの巨大惑星、12月21日には、狭い望遠鏡の視野に一緒に入るほどの超大接近。
角距離は0.1度(6分)と非常に近く、月の直径の1/5程に相当し、高倍率の望遠鏡の同一視野に収まってしまうほど。
それまでの期間、日々距離を縮めていく、木星と土星。
という事で、なかなか晴れ間が覗かなかった、ナイロビの空も晴れ間が覗くようになって来た。
サンニッパでの惑星撮影での、リベンジを行う事にした。
今回はサンニッパではなく、ゴーヨン、500mmf4の望遠レンズで惑星撮影の再チャレンジ。
木星、土星の両惑星とも天頂近くにあるので、大気の影響も最小限、撮影には絶好のコンディションだ。
今回の撮影システム
今回、惑星撮影に使用したのは、ニコンの500mmレンズ、Ai Nikkor ED500mm f4P。
サンニッパの300mmと比べれば、ゴーヨンの500mは、焦点距離も長く口径も大きいので、惑星を撮影すれば、サンニッパよりもずっと細部まで写る事が予想される。
高倍率にして、どこまで細部まで写るかは、基本、レンズの直径、口径で決まる。
その口径は、サンニッパの107mm、F2.8に対して、ゴーヨンは125mm、F4。
F2.8に対してF4。口径が大きく、なおかつレンズのパワーにも余裕があるので、高倍率での惑星撮影、さらなる高画質が期待出来る。
という事で、長年使っている、ニコンのマニュアルのAi Nikkor ED 500mmf4PにVixenの、NPL6mmのアイピースを取り付け、拡大撮影法で木星を撮影する事にした。
このレンズについてちょっとだけ説明
このAi Nikkor ED 500mm F4Pは、1988年3月に発売されたレンズ。
一番後ろにPの文字が付いているのは、マニュアルレンズでありながらレンズ情報を電子的にカメラと通信する事が出来るレンズ。
ニコンからは3本しか発売されていないちょっと珍しい形式の一本だ。
オートフォーカスに移行する前には、プロ 御用達の評判の良かったレンズ。
レンズ構成は、6群8枚に一枚の保護ガラスが加わる。39mmの後部差し込みフィルターが使える。
管理人がこのレンズを購入したのは確か1994年。
特殊低分散ガラスのEDレンズが使われた短焦点望遠レンズ、写りに関しては今でも十分使っていけるほどにシャープでボケもきれい、とにかく画質がいい。
発色は50mmf1.2と同等の発色とコントラスト。
いわゆるニコンカラー。
コントラストが若干高めで、クールで渋い発色をする。
ナノクリを使った新しいレンズの発色よりも、管理人はこのクールな発色が気に入っている。
最近のレンズ、コーティングが良くなり透過率がものすごく高くなった。
更に、レンズ内の迷光遮光処理も十分気が使われた結果、どのメーカーのどのレンズも発色などの違いは殆ど見られなくなったように思う。
甘みばかりで、今どきの酸味が無くなって味気なくなった果物のようにも感じる。
古いレンズでも評判の良かった高性能レンズ、やはり今使っても高性能。
さらに、高画質でありながら、多少残る酸味や渋みによって味わい深い。
こういったレンズ、使っていて、写真を撮るのが楽しくなる。
この500mmレンズ、重量的には初代AFSサンニッパよりも軽いのだが、500mmというだけあって鏡筒がとても長い。
流石にスカイメモTでは無理だという事で、架台はビクセン、スーパーポラリス赤道儀を使用した。
長いシステム、たわまないようにサポートを取り付けた
このスーパーポラリス赤道儀、購入したのは1985年、管理人がまだ小学生6年だった頃、ちょうどハレー彗星が来たちょっと前だ。
小学生にとって非常に高い買い物、お年玉にプラスして、親戚の方々にカンパをお願いして購入したもの。
当時の日本はバブル前の経済絶頂期、皆羽振りが良かった時代だったから可能だったのだろう。
今だったらちょっと考えられない。
また、Made in JAPANのものづくりの時代。入門機にしろ、良い物を作ろうと、製品一つ一つに職人の魂が入っていたと感じる。
当時購入したセットの鏡筒は102mmのアクロマート屈折望遠鏡。
赤道儀だけナイロビに持ってきているが、鏡筒は多少レンズにカビが生えているが、今でも日本で健在。
鏡筒も赤道儀も非常にしっかりと作られているので、35年経過した今でもびくともしない。
もちろん日本製で、保障は5年間。
そんなスーパーポラリス赤道儀、今でも大事にアフリカに持ってきて使っている。
今年、息子の年齢が、ちょうど望遠鏡と赤道儀を購入した時の管理人の年と同じだ。
撮影方法は以前紹介したとおり。
レンズとカメラの間に、アイピースを挟みこんで、拡大撮影法で撮影した。
違いはレンズの焦点距離300mmが500mmと長くなった点。
今回、このシステムによる拡大撮影法の総焦点距離を計算すると。
500 x (120 ÷ 6 - 1) = 9,500 mm
マイクロフォーサーズなので、35mm判に換算するために2倍にすると、19,000mm相当。
画角は前回サンニッパで撮影の11,400mmよりもかなり狭くなる。
惑星を視野の中に入れるのは至難だが、今回は微動装置の付いた赤道儀。
自由雲台による導入とは比べられないぐらい簡単だ。
視野が狭く、使用しているのはファインダーではなく小さな照準、惑星を視野に入れるのはなかなか骨の折れる作業には変わりなかった。
でも、一旦視野に入ってしまえば後は簡単、微動ハンドルで簡単に中心に導入出来る。
自由雲台とは比べ物にならないやりやすさ。あたりまえだが。
観測、撮影は長男と共に、ナイロビのアパート屋上で行なった。
長男も、興味深そうにスクリーンに浮かび上がる惑星の姿を眺めていた。
今回は液晶で惑星の姿を眺めただけ、見ているのは木星ではなく、液晶画面。
電子的に処理され液晶に映し出される木星の錯覚に過ぎない事になる。
音楽だと生演奏と録音音源再生の違いのようなものだろう。
液晶画面を見るのは、そういう事だ。
その事はミラーレスと一眼レフの違いにも通じるだろう。
次回は、息子にダイレクトに宇宙を旅してきた本物の光を、アイピース越しに見せてあげよう。
動画の一こまを切り出した
撮影は、パナソニックのGH4を使用。
最低感度200で、絞りは半絞り絞ってf4.5に設定、露出は、1/30秒。
この設定で、1分30秒の間の動画撮影を行った。
このGH4、EXテレコンという、ピクセル等倍で撮影が出来る機能が備わっている。
惑星を視野に入れてからは、EXテレコンを使用してHDで録画。
この機能、センサーの解像度を最大限に使えるので、惑星撮影ではとても重宝する。
録画中は、風が吹かない事を念じながら時間が来るのを待つのである。
風さえ吹かなければ、架台、三脚が弱くても結構いける。
RegiStaxによる画像処理
上の写真を見るとボヤッとしているが、実際液晶を覗いているともっと細かなところまで見えている。
液晶画面に映し出される映像の、細部まで見えた瞬間の残像が、脳裏に焼きついていくのだろう。
だから、一こまを取り出しても、実際に見えているような姿は浮かび上がらない。
動画の撮影中、刻々と変化する木星の姿を記録し続けてくれる。
秒間30コマの連写撮影、1分30秒の撮影を行うと、その間に2700枚の静止画を撮ったのと同じ事になる。
液晶画面を覗いていると、時々ものすごく細かな模様が見える瞬間がある。
スタッキング処理は、そんな良く見えた部分ばかりを静止画として取り出し、重ねて合成、さらには淡い濃淡を強調する作業にあたるのだろう。
この処理をする事によって、動画撮影時には見られなかった細かな模様まで、浮かび上がってくるので、処理された画像を見て、毎度の事ながら驚くのである。
スタッキング処理には、以前にも使用したRegistax6というフリーソフトを使用。
無料のアプリがここまでやってくれるか!というぐらいの優れた、一押しアプリだ。
ただ表示は英語。
手作業でやっていては気の遠くなるような手間のかかる作業をあっという間に、自動的にこなしてくれる。
ただ、動画のファイル形式、AVIとMPGのみの処理が可能なので、一旦動画のMOVフォーマット形式を変える必要があったりする。
なおかつ、480x720のSD画質。
超高拡大、光学系の分解能をちょっと超えての撮影なので、SD画質でも十分なのだ。
拡大撮影方は、光学系の分解能ぎりぎりをまさぐる撮影方なのだ。
Registax6については、まだ使い方を完全に理解しているわけではなく、惑星の姿がより浮かび上がるように、いつものようにいろいろと手探りで作業を行った。
そして、今回仕上げた画像が、下の写真(上の写真と同様)。
拡大撮影法、上下左右、東西南北が逆さまになっている。
とりあえずそのまま出した。
いろいろ試して、今回完成とした木星の画像
上の木星の写真を仕上げるため、同じ動画からスタッキング処理を何度か方法を変えて行った。
そのうち良さげの3枚をフォトショップでいろいろと試行錯誤しながら、トーンの細部がより詳細に表示されるように合成作業を行った。
まとめ
荒削りではあるものの、木星表面のかなり細かな部分まで、濃淡がしっかりと出てくれた。
口径125mmで、こんなにも木星の細かな様子が見えるという事に、管理人自身も驚いている。
最初に予想していた通り、サンニッパで撮った物よりも木星のずっと細部までが表現された。これは口径の差、焦点距離の差によるものだろう。
右下には大赤斑の姿。
木星表面が始めて望遠鏡で観測されて以来ずっと渦を巻き続ける大赤斑、地球の直径をはるかに越える超巨大台風にあたるもの。
今回の撮影と、画像処理でそんな大赤斑の姿も、かなり分かりやすく写ってくれた。
この500mm望遠レンズを使った惑星撮影システムで、どこまで木星の細部が表現できるか、しばらくいろいろ試そうと思っている。
きっと、もっと細かな模様が出てくれる事だろう。
画像処理に関しては
毎度、処理方法、合成方法が違ったりしているので、仕上がりが大きく違ってしまう。
画一した処理方法、合成方法をいま模索中だ。
土星
画面には、土星の姿
木星と比べるとずっと暗い土星の姿。このシステムだとちょっと暗かったのと、土星に視野を合わせた瞬間、赤道儀の追尾が止まってしまった。
バッテリーは十分充電していたのだが。
後々分かった事だが、接触不良と、バランス不良による負荷が原因だという事が分かった。
という事で、後日アイピースを10mmにして拡大率を落とし、多少明るくして、いろいろ設定を変えて再チャレンジしたのが下の写真。
カシーニの間隙もよく見えるようになった
まだまだ、細かなところまで写る手ごたえがあるので、いろいろと試しながら満足な仕上がりが得られるよう惑星撮影に挑戦しようと思っている。
やはり焦点距離300mmのサンニッパと比べると圧倒的な解像度を見せ付けてくれた500mmのゴーヨン。
販売からかなり経つレンズであるが、その解像度は惑星撮影で見たとおり必要十分。
一般撮影でも、オートフォーカスが必要でなければまだまだ使っていける超高性能レンズだという事が分かった。
それと、ビクセン社製のアイピース、NPL6mm、古いPL10mm(管理人が大昔の高校時代購入)と比べると、抜けのよさ、収差の少なさ、見やすさ、その高い性能。
ビクセン望遠鏡のセットに付属してくるアイピースが、この高性能、これには心底恐れ入った。
アイピースも、収差の発生源になっていた事を改めて知るのであった。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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