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Photographer Takashi Iwamoto Blog

ブログ | アフリカ フォトグラファー 岩本貴志|ドキュメンタリー ビデオ / 写真 撮影

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執筆者の写真岩本貴志

「都会のオオタカ、繁殖の記録」40 エピローグ、つながっていく生命

更新日:2023年2月21日


「都会に進出した猛禽、オオタカの物語」


このブログでは、2017年7月から2018年12月までの間、都会の公園の中、管理人の目の前で繰り広げられた野生のドラマ、オオタカの生き様を紹介しています。


いつものメスとは別人?


 


完全に去っていった幼鳥たち。


これは、幼鳥が完全にオオタカの森を去ってからのお話。



枝折の行動をオスに見せるメス



昨年(2017年)同様、10月、今年もメスが枝折りの行動を見せて、オスに対して「また来年、ここで繁殖しようね!」と意思表示を見せる行動が見られた。

管理人は、儀式化された、メスがオスに対して行なう、意思表示行動とみている。


2年間にわたって繁殖に成功したこの森、来年もきっとここで繁殖していく事だろう。

この意思表示行動が見られた日から、メスは再び、オオタカの森から姿を消した。



そんなやり取りがあってから2週間ほど経った11月半ばのある日。


近くの森で、オオタカが番いでいるところを見つけた。

オスはここを縄張りに持つ、いつものオスのようだ。

メスのほうはというと、「あれ?!いつものメスと違う!」

確証は持てないのだが、メスのほうは、どうも他所からやって来た者のようにも見える。


オスは、よそ者のメスでも繁殖期でなければ追い出したりはしないのだろう。

というか、番いの相手がいないからなのだろうか?

番い相手のメスも、どこで何してるかも知れないし。


他のメスを受け入れる事は、繁殖のために、オスにとってはデメリットよりもメリットのほうが大きそうだ。


相方のメスが事故にあったり、怪我をしてしまったり、はたまた別のオスと一緒になってしまったりと、何かの理由でもどってこなかった時のための保険のようなものだろうか?


こんなオスとメスが番いでいる光景は、数日間続いた。


新たなメスが繁殖相手を求めてやってきたのだろうか。

オスは縄張り、来年の繁殖場所の見張りを続ける。


こんな感じで、この時期、新たなオスとメスの出会いが、あちこちであるという事になる。



新たにやって来たメスの気を引くためか、はたまた第一妻のためか。



オオタカのオスは何か相方メスにビッグプレゼントを画策しているようだ。


もしくは、新たにやって来たメスにお願いされたのかもしれない。


そのプレゼントとは、左(上)写真のコガモ。


ボリュームもあって、油が乗ってきっとおいしい事だろう。


狩った事の無い獲物を狙うとは、新たにやって来たメスへのプレゼントといったほうが理にかなう気がする。


「こんな大きな獲物が捕まえられるんだぞ!」と、自分自身の強さのアピールでもあるのだろう。


といっても、コガモは水鳥、地上にいる事は殆ど無い。


果たして水鳥の狩り、どうすれば成功させる事ができるだろうか?



最初の頃はじっと、カルガモや、オナガガモを観察する姿が幾日も見られた。

この、獲物というか生き物をじっくりと観察する姿、夏に巣立った長男を思い出す。

オオタカのオスに共通する行動なのだろう。


狩りを成功させるのに最も重要な事は、相手を良く知る事。

その相手を知るための観察をしているようだ。



最初のうち、大きなカモもよく観察していた



オオタカはカルガモを観察しながら、きっと、いろいろな事を思索しているのだろう。


狩りをする際、相手がどう反撃してくるか?、やられるほうは生命がかかっているので、命がけの反撃だ。

そして、獲物に足をかけたところで、反撃をかわし、どうやって絶命させるか?捕まえた後、持って運べるか?どこまで?などなど。

頭の中では、狩りをした場合のメリット、デメリットを、足し算引き算している事だろう。


カルガモは大きく力も強い。

だから、この時は(上写真)、反撃も激しく、絶命させたところで、カルガモは大きすぎるし、水中からではとても持って飛ぶ事は出来ない、との結論に至ったように見える。



それにしても、こんな近くでオオタカに真正面から、にらまれるカルガモの気分はどんなものだろうか。

カルガモは平静を保っているが、腰が引け、いつでも飛立てる準備でいる。

お互い、野生の世界、共生する隣人相手には、弱みは見せようとしない。

逃げないのであれば、相手に動揺していないところを見せなければ。


カルガモは無理そうだという事で、オオタカがターゲットに選んだ獲物は、サイズも一回り小さく、大きな群れを作らず、いつも数羽でいるコガモ君


それからしばらくの間、オオタカは木の梢にいる時も、コガモの行動をずっと観察していた。


最終的な結論として、こいつだったら狩りが出来る!という結論に至ったのだろう。


そしてハンティングにチャレンジするチャンスがやって来た。


近づけば潜ってしまうコガモ



見ていても動きの遅いコガモ、オオタカは簡単に捕まえられると見越していたのだろう。


でも、近づくとコガモはすぐに水の中を、深く潜ってしまう。

はたして潜っているところを、捕まえられるだろうか?

オオタカは空中を何度もホバリングしながら狩りに挑戦するが、コガモは近づく度にすぐに水中へと潜ってしまう。


オオタカが空中をホバリングする時間よりも、コガモの方が長く水中に留まっていられる。


なかなか一筋縄ではいかないようだ。


大きなオオタカが、空中をホバリングするのには大きなエネルギーが必要なので、そうそう長くは続かない。


動きが、遅かったり、武器という武器を持っていない生き物、こんなふうに生きるための隠し技を持っている場合が多い。

コガモの武器というか防具は、水中に長くとどまって身を守る事のようだ。



水の中にダイブしてみた



この場所は水深も深く、オオタカの足は川底に届かない。

下手すれば、自らが溺れてしまう。


水中に足を伸ばしても、コガモを触る事も出来なかったようだ。

というか、コガモは既に水中を泳いで逃げて、この下にはいない事だろう。


水深が深かったおかげで、オオタカに狙われていたコガモ、なんとか難を逃れる事が出来た。


オオタカは何度もこのコガモの狩りに挑戦したが、この日、捕まえる事は出来なかった。


何度も襲われそうになったコガモ君、難を逃れて、とにかくほっとしている事だろう。



オオタカは、今回の挑戦の失敗で何かを悟ったようだ。


「水深が浅ければ、コガモが逃げる事が出来ない。」

「水深の浅いところのコガモを襲えば、きっと捕まえられる!」という事。



そして、翌朝。



次の日の朝、既に狩りは成功させていた、足の下にはコガモ



次の日の朝、オオタカはコガモの狩りを成功させていた。

見つけた時には既に、狩りを終えた後。


オオタカはコガモを水中に押さえつけ、呼吸を出来なくして殺そうとしているようだ。


この場所はオオタカが立てるほどに水深も浅く、コガモは逃げ失せる事が出来なかったのだろう。

そのおかげで、オオタカは狩りを成功させる事が出来た。


オオタカは、この場所は水深が浅く、ここで狩りをすればこの前のように、コガモが水中に逃げる事が出来ず狩りを成功させる事が出来ると、目星をつけていたようだ。



何とか、捕らえた獲物のコガモを岸辺へと運ぶ



水中にしばらくコガモを押さえつけ続けていたので、オオタカ自身の羽も水に濡れ、揚力は普段よりも失われているはずだ。

それでも、獲物を水面に引きずり、何とか岸辺にたどりつくことが出来た。


オオタカの羽は、あれだけ長い間水に使っていたにも関わらず、殆ど濡れていない。

羽の手入れも十分行き届いているようで、防水が効いていたようだ。

いつもながらというか、水鳥の狩りに備えいつも以上に羽の一枚一枚に脂を塗り込み、準備も十分に整えた上で狩りに挑んだのだろう。


狩人の王者、オオタカのオスの羽がいつもつややかなゆえんなのだろう。



やっとの事しとめた大きな獲物



呼吸を整えるために、しばらく岸辺でじっとしていた。

この狩り、水中を暴れるコガモを抑えつけるため、相当の体力を消耗しただろう。


はたして、こんな大きな獲物を持って、飛ぶ事は出来るのだろうか?

オオタカの頭の中では十分にシュミレーションされているはずだ、「何とか飛べる!」と。


しばらくして呼吸も整ってから、意を決し、岸辺を飛立った。

獲物を掴んでいるので、いつものように、地面を蹴る事も出来ない。



今までに運んだ中では、きっと最大級の獲物のはずだ。



全力で羽ばたくが、なかなか上昇していかない



なかなか上昇しないが、速度が付けば揚力も上がり目的の木の枝に辿り着く事はできるという事は、計算ずくのようだ。


羽が濡れていては、とてもコガモを持って飛ぶ事は出来なかっただろう。


こんなところにも、行き届いた羽の手入れが生かされている。

空を飛ぶ鳥にとって、羽の手入れは非常に重要だという事だ。



獲物を持ってやっとの事辿り着けた木の枝



やっとの事辿り着けた木の枝。

この場所は、安定も悪く、大きな獲物をさばくのにはあまり向いていないようだ。


それ以前に、この獲物はメスへのプレゼント、ここは川に近い森の端、目立たないし、メスに対してのアピールには向いていなさそうだ。

見つけてもらえないかもしれない。


理想は、森にメスがやってきたら、声をかけずとも、すぐにでも見つけてもらえる場所、森の真ん中辺り、森の樹上のどの場所からでも見える場所がいい。


メスに好かれる、オオタカのオスの条件、色々と奥が深そうだ。


そんな事を考えてか、再び息を整えてから、森の真ん中のそんな理想と思われる場所へと獲物を運んだ。



ここは枝も太く、森の樹上全体から見下ろす事ができる



獲物が運ばれたのは、森のほぼ真ん中、メスに告白して、餌を渡すには理想と思われる場所。


ここは樹上からであれば、森全体から見つけられる。さらに、横になった木は太く、獲物の安定も良さそうだ。


いつもだったら、そろそろメスはやって来る頃。

オスはメスがやってくるのを待ちながら、あえてゆっくりと獲物の羽むしり作業をしている。


ゆっくりと手を抜き、メスが来るのを待ちながら作業をしてるので、オスはだんだんと眠くなってきた。


オスはいつもは一生懸命、だから、手を抜いて作業をするのは苦手なのだ。


「つい今しがた捕まえた新鮮な獲物だ!」とアピールするためには、羽をむしっているところをメスに見てもらう必要がある。

だから、メスが森にやってくるまではゆっくりと作業を進めるのだ。



メスを見つけたオス



しばらくすると、メスが森へとやって来た。

想定していた通りの頃合。

眠気で、閉じかかっていたオスの眼はぱちりと見開いた。


メスは、森のてっぺんから獲物をさばいているオスの様子をうかがっている。

木の上から様子を見ているようだが、なかなか近くに降りてこない。


下にいる人たちの事が気になるのかもしれない。

この様子から、人間慣れしたあのメスとは違うのは間違い無さそうだ。

番いのメスだったら、人の事など気にせず、すぐに下りてきた事だろう。


見慣れたメスと、模様もサイズが違うのはもちろんだが、仕草も大きく違っているようだ。

管理人の独断の観察によるものだが、それは確証に近づいてきた。


この後、管理人の都合上、この場所を後にしたので、この後の出来事は分からない。


この次の年、このオスと繁殖をしたのはどちらのメスだろうか?

思うに、2年間寄り添った妻だとは思うが。


この新参メスにも、どこかに番いのオスがいて来年の繁殖に備え、縄張りを守りながらメスの帰りを待っている事だろう。



このビッグプレゼント、もしこのメスが受け取っていたとしたら、相方に万が一があった時には、きっと番いを組む事になるのだろう。

それが何年も先の事だとしても。


万が一に備えてか、番相手の保険をかけている、オオタカの、オスとメス、

管理人の妄想に過ぎないものだが、見ていて、とてもとても、強かだと感心した。




この年(2018年)、オオタカの大きな動きを観察したのは、この日が最後。


この数週間後、管理人は日本を発つ事となった。



 

今回、オオタカを1年以上にわたって観察して、生命の強かさ、その全ての行動において、研ぎ澄まされ無駄が無い強かな生き様を、ファインダー越しに垣間見る事ができた。

そんなオオタカの観察を続ける管理人に、情報やアドバイスをくれた人々には非常に感謝している。そんな情報が無ければここまで事細かなオオタカの姿は追い続けられなかったのは間違いない。この場を持って情報を提供してくださった方々には深くお礼を申し上げる。



オオタカのその強かさの中には、なんといっても親の子へ対するたゆまぬ愛情、そして子を立派に自立させるための、考え抜かれたとしか思えない父と母の分業と何処をとっても無駄の無い行動の数々。


2018年、管理人は日本にいる間、オオタカを観察すると同時に、井の頭公園のカイツブリも同時に観察していた。

種も、生態も違えど、その強かさ、子への愛情は全く同様だ。


生命をつなげる生き物たちのドラマは、一瞬も休む事無く、続いていく。

今もって、都会の真ん中で生きていける由縁、それは人の温かい生き物に対する感情もさる事ながら、その研ぎ澄まされた無駄の無い行動と、親の子に対する愛情に起因するのだろう。


それは、アフリカのサバンナであろうと、熱帯雨林のジャングルの中であろうと、都会の公園であろうと全く違いは無い


この美しい地球上、生命が誕生してから数十億年の長い間、途切れる事無く研ぎ澄まされ続けながら、ずっと繰り広げられてきたドラマだ。

地球が美しい所以も、そんな研ぎ澄まされつづける命があってこそ。


このブログ、「都会のオオタカ、繁殖の記録」も、都会の公園でもこんな生き物のドラマが繰り広げられている事を多くの人々に知ってもらいたくて書き始めた。

全40話と長くなってしまったが、管理人が見て観察したものを、このブログの中に凝縮したつもりだ。


一時は絶滅危惧種に指定されるほど数を減らしたオオタカ、再び数が増えてきたのも、人々の理解があってこそ。


これからもずっと生きていって欲しい、かけがえの無い生命。


そんな生命の姿を、今後もファインダーを通して管理人自身見つめていければと思っている。



日々研ぎ澄まされつづける美しい生命、そして命の源、太陽





おわり




最後までお読みいただきありがとうございました。


 

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