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Photographer Takashi Iwamoto Blog

ブログ | アフリカ フォトグラファー 岩本貴志|ドキュメンタリー ビデオ / 写真 撮影

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執筆者の写真岩本貴志

「続、カイツブリの子育て」その19、場所が悪かったトンボ君

更新日:2022年7月27日

このブログは2018年に井の頭公園で繁殖したカイツブリの繁殖、子育て奮闘の様子を紹介しています。


前年、観察を続けていたヒナたちは全滅。今年こそヒナが立派に成長するまでの一部始終が見てやろう!と、書き始めたのがこのブログです。


9月半ばになると、池のあちこちでトンボの産卵が見られるようになった



今回は、カイツブリ君に食べられてしまったトンボ君の災難のお話をします。


 


事はトンボ君(コオニヤンマ)が交尾の真っ最中に起こった。


日の照りつける晴天の日、トンボの番いは交尾をしながら優雅に池の上を舞っていた。

トンボ君は体も温まり、絶好の産卵日和。

トンボを狙う外敵から身を守るためなのか、ちょっとした木陰に入った。


そこは、トンボ君たちにとってはただの木陰ではなかった。

待ち受けていたのはカイツブリ君。


この場所は、ひょうたん橋近くカイツブリ君の営巣している場所。

カイツブリ君にとってトンボは大のご馳走。

抱卵中の親鳥は、いつもお腹がすいている。

近くにトンボが飛んでくると凝視して、「ト、ト、トンボ来い!」「こっちの水は甘いぞ!」とでも念じているようだ。

カイツブリの首はゆっくりと、トンボの動きに合わせて、首が動く。

すると、トンボのほうが自らカイツブリに近づいて行くようにみえる。

カイツブリは巣で待っているだけ。

何がトンボを引き寄せるのだろう?

カイツブリの巣が程よい休憩場所とでも感じているのだろうか?

おそらく、半分木陰で、水草も密集しているので、産卵に好都合の場所だと感じたのだろう。


もう少し引き寄せて、我慢、我慢!


トンボ君はちょうど交接の真っ最中。

2羽つながったトンボの動きは緩慢。

カイツブリはトンボの真後ろで、視界に入っていない。

それに、カイツブリは日陰の中。

トンボ君には、カイツブリが自分たちの事を狙っているのに、全く気がついていない。


カイツブリ君、「焦るな!タイミングを誤ると逃げてしまうので、十分引き寄せてから!」

首はゆっくりと動くものの、くちばしでつかむ照準をしっかりと合わせ、タイミングを計らっているようだ。



よし、今だ! 「がぶり!」

トンボが、カイツブリの射程圏内に、十分近づいた瞬間、カイツブリ君は一気に首を伸ばした。


一瞬の出来事で、トンボ君には何が起こっているのか全くわからない。

既にカイツブリのくちばしに挟まれて身動きの取れない状態だ。

トンボ君、もう逃げられない。二匹ともやられてしまうのだろうか?

カイツブリ君、「よし、つかまえた!」

2匹つかまえて食べるのかな?

トンボ君、オスは難を逃れたが、メスはカイツブリの肉になる事になってしまった。


すると、後ろにくっついていたオスのトンボは、メスから離れ、空中を舞った。

トンボ君、オスはなんとか難を逃れる事が出来たようだ。


ちょっと離れて、空中から、何が起こったかの状況もつかめたようだ。

やられたのはメスのみ。

子孫を残すはずだったメストンボ、カイツブリの肉になってしまうとは。


「トホホ...」「さようなら、」

難を逃れたトンボ君のオスは新たなパートナーを見つけるために飛び立った。

他のオスの、ライバルはたくさんいる。


「再びパートナーとなるメスを探さなくては!」


「パートナーを探すのも大変だ!」

「でも、食べられなくて良かった!」

水中にいるトンボの幼虫、ヤゴもカイツブリに捕まった!その様子を眺めるトンボ

肉食動物は多くの命の上に成り立っている。

小さなカイツブリだけれど、ここまで成長するまでにどれだけの小動物の命を食べて成り立っているのだろう。

カイツブリ君は、小動物たちの結晶と言えるだろう。

そういう食べられてしまったトンボ君だって肉食動物なのだ。


食べるもの、食べられるもの、自然の中のつながり、食物連鎖、生命の営みを、井の頭公園に見る事が出来た。



つづく

 

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