今回のブログでは、既に生産が完了しているケンコー・トキナー社製のズーム魚眼レンズを取り上げます。
あれれ?フードがないぞ???
魚眼レンズって?
一般的なレンズは、被写体を画面のどこに配置しようとまっすぐなものはまっすぐに写る。
これは当たり前といえば当たり前。
そういった普通のレンズで、地平線を画面の端に配置しても、まっすぐに直線状に写る。
そう写る様に設計されているからなのだが。
それと比べ、魚眼レンズで撮影すると、画面中心から外れるに連れ、大きくゆがんで写るのだ。
魚眼レンズで、地平線を画面の端に配置すると、外側に弧を描いた大きな曲線として写し出される。
魚眼レンズは、あえて、直線を直線として写し出さない様に設計されたレンズともいえる。
最近流行のアクションカメラ等も、基本魚眼レンズを搭載しているので、そう目新しい画角ではなくなっているので、イメージはしやすいかと思う。
そんな魚眼レンズで撮影、その特殊な効果を利用すると、思いがけない写りをしてくれたりするので面白い。
魚眼レンズといわれる由縁
水中を片目で180度の周囲を見渡す魚の目を例えて、魚眼レンズと言われるのだろう、きっと。英語でもフィッシュ・アイ
実際、人間の目も、そう考えるとほぼ魚眼レンズなのだ。
両目でボーっと広い視野を見ようとして、両手を広げると、左右に広がるその視野は180度ほどある事が分かる。
その周囲が直線?いやいやちゃんと魚眼のように曲線になっている。
まっすぐに見えるのは、まっすぐなものはまっすぐだ!と脳でちゃんと補正されているから。
対角魚眼と円周魚眼
魚眼レンズには、対角魚眼レンズと円周魚眼の2種類のレンズがある。
前者は、写真、長方形の画角、対角線上の視野が180度。
そして、後者は画面の中に、円形に画角180度全周囲が写し出される。
今回紹介するトキナーのAT-X 107 DX Fisheyeは、魚眼レンズの中でもユニークなズームレンズ。
残念ながら、生産は既に完了した一眼レフ用のレンズだが。
リコーイメージング、ペンタックスからも同スペックのレンズが発売されているが、こちらはまだ現役。
さらに高性能な、HDコーティングが施され生まれ変わった、HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED、
さらに抜けの良くなった描写が期待出来る。
どちらもインターネットのサイトで光学系が見られるのだが、どちらも8群10枚、枚特殊低分散ガラスを1枚使用した同じ光学系のようだ。
コーティング等の味付けが違うと思われる。
魚眼レンズは、中心を通る線は直線として写ってくれる。
下写真の地平線。
東京都庁の展望台、四角い窓も潜水艦の窓のように写る
魚眼ズームレンズ、ATX107 DX Fisheye
フルサイズでこそ生かされる広い画角、ニコンの特権
このケンコー・トキナーの魚眼ズームレンズは、基本的にAPS-C用にデザインされたレンズだが、フルサイズで撮ると、これがまた面白い。
ニコンのフルサイズ一眼レフカメラを使用する場合、カメラの設定は、APS-Cレンズ自動切換えをオフに設定する必要がある。
この設定にするとAPS-C用のレンズでもフルサイズで使用する事が出来る。
※APS-C用に設計されたレンズ、フルサイズで使えば基本的に周囲が蹴られます。
残念ながらキャノンだと出来ないはず?
確かミラーが干渉したりとか、サイズ的にぎりぎりに設計されていて、フルサイズカメラにAPS-C用のレンズの互換性が無かったと思う。
フルサイズでの周辺部の画質
フルサイズで撮影すると、APS-C画角の外側の視野周辺部は、収差で若干画像が荒れる。
ちょっと絞ればほぼ気にならなくなるので、さほど問題は無い。
それよりも、円形に広がる画像のインパクトは圧倒的だ。
ペンタックス用のものもAPS-C用レンズとして発売されている。
でも、モデルチェンジし新しくフードが取り外し出来るようになったので、フルサイズで円周魚眼に近い画角が楽しめるようになった。
APS-C用として発売されていた理由は、周辺部の画質が基準値を満たしていないからなのだろう。
設計思想はAPS-C用だったが、これがフルサイズでつかうと面白くなった。
ってな感じかな?(筆者の憶測)
レンズの構造と操作性
絞りリングは無くなっているが、クラシカルな作りのレンズ。
ニコン用のレンズには、オートフォーカスモーターは搭載されていないので、昔ながらのボディ側のモーターで駆動する仕組みとなる。
注意が必要なのは、ニコンのD3000やD5000シリーズの、カメラ本体にオートフォーカス駆動用のモーターが搭載されていないカメラでは、オートフォーカスは作動しない。
よりオートフォーカスを必要とする人向けのカメラで、オートフォーカスが使えないのはちょっと酷かな?
マニュアルでの操作感は、スカスカした感じ。
ギアを通して駆動系が回る音がするので、動画で使用するには音入りに注意が必要。
ズームリングはシットリと滑らかに回転するが、こちらもこすれた音が出る。
写真撮影においては全く問題ないが、動画で使用する際はちょっと注意が必要だ。
絞り羽根は6枚、ボケ味とかあまり関係の無い焦点距離と明るさ。
必要最低限、といった感じかな?
APS-C画角で、対角魚眼から1.7倍のズームレンズ
APS-C用レンズとありAPS-Cで撮影すれば、当然けられは全く発生しない。
広角側にして、対角魚眼の画角をカバーし、そこから1.7倍のズームレンズとなる。
一つ注意が必要なのは、ニコンとキャノンとではAPS-Cの画角が違ってくる点。
ニコンのAPS-Cはフルサイズの1.5倍相当、画角180度
キャノンのAPS-Cは1.6倍相当となる、画角162度
なので、同じAPS-Cでも、キャノンのほうがニコンに比べて画角が若干狭くなる。
キャノンのAPS-Cは望遠で有利になるが、広角側はニコンに比べて不利になる。
なのでキャノンのAPS-Cカメラだと画角は対角魚眼とならず、162度とちょっとなり物足りない画角の狭い魚眼レンズとなってしまう。
フルサイズで、ほぼ円周魚眼から対角魚眼のズームレンズ
それに対し、フルサイズで撮ると望遠側がほぼ対角魚眼の画角。
※要改造
そこから広角側にズーム出来るレンズとなり、完全とはいかないが、円周魚眼に近い画角をカバーする。
最広角
オリンピックポスターが掲げられた東京都庁
上の写真が、フルサイズの焦点距離10mm、最も広角で撮影した画角。
写真の上下が多少けられるものの、面白い表現が可能だ。
こうやって真上に向けて撮影すると、上下どちらに向けても良い写真に仕上がる。
周辺部が画質が解かるように拡大したのが下の画像。
絞りをf7.1に絞ってピクセル等倍、
焦点距離10mm、同写真をピクセル等倍まで拡大したもの。
使用カメラはニコンD800E、画素数は3600万画素
カリッとシャープなわけではないが、画面の端でも必要十分な画質がある事がわかる。
撮影したのは、東京オリンピック前、2017年の都庁。
オリンピックのロゴポスターが貼られていた。
かれこれ6年前の写真。
葛西臨海水族園のペンギン
上のペンギンの泳ぐ画像は、望遠側、17mmで撮影したもの。
対角魚眼より、若干狭い範囲が画面に収まる。
魚眼レンズ、アクアリウム、水槽の中の写真を撮るのに相性がいい。
平面のガラスを通して、光が屈折し、拡大されるのと関係しているのだろう。
水族館とか行く時には大抵カメラバックに潜ませるレンズだ。
最短撮影距離17cm
最短撮影距離が14cmと非常に近いので、魚眼レンズの特性を生かした遠近感を強調した表現が可能だ。
ナイロビ博物館のカバの剥製
最短撮影距離ではないが、カバの口の大きさをより強調した写真が撮れた。
デフォルメされた姿がとてもコミカル。
コミカルに見えても、アフリカでは最も危険な動物。
確か、ケージのガラスにひっ付けて撮影している。
明るさf3.5~4.5
明るさは3.5~4.5とちょっと暗い。
日中の撮影では別に問題ないが、星空を撮るにはもう少し明るさが欲しいところ。
特に望遠側は4.5とちょっと暗いので、星空の撮影にはあまり向かない。
また、フルサイズで撮影する場合、望遠側は広角側よりも収差が目立つので、さらに多く絞る必要が生じる。
それに対して広角側は、フルサイズでも開放f3.5付近から周辺部までシャープでけっこういける。
流星のタイムラプス撮影や、空の雲の動き、はたまたオーロラなどなど、広角側けっこう出番がありそうなレンズだ。
とにかくコンパクト
重さはたったの350グラム、全長71.1mm、最大径70mmと非常にコンパクト。
大きく重いレンズが立ち並ぶ中、このコンパクトさ。
カメラバッグに入れておいてももさして苦にはならないだろう。
他には無い特殊な表現が出来るレンズ、デフォルメの出方に気をつければ、けっこう室内での記念写真などでも使えるレンズだ。
ナイロビ博物館
時々、荷物を増やさずに変わった写真が撮りたいなーと思う事がある。
そんな時、カメラバッグに忍ばせるのがこの魚眼ズームレンズだ。
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