ブッシュでの機能性を追及したクルマの形、HZJ75
アフリカ、ケニアを拠点に活動するフォトグラファー、岩本貴志のブログへようこそ。
今回は愛車ランクルの、エンジン冷却システムの不具合を直したのでその事について書いていきます。
ちなみに車は、1991年製トヨタ、ランドクルーザー、HZJ75、1HZ、4200cc、直列6気筒、ディーゼルエンジン搭載車。
乗り始めたのが2002年なので、20年以上一緒に過ごしてきた事になります。
管理人が趣味でやっている自己流修理、ご参考になればとブログに記しました。
※実際、修理をされる方は自己責任でお願いします。
エンジンが温まらなくなった
整備が生活の一環になっている愛車ランクル75、調子が良くなると走るには気持ちがいいが、いじりガイがなくなり、どうも寂しくなってくるのだ。
そういっても、常に何かしらいじらせてくれるので、寂しくなる事もそれほど無いのが実情。
「何か直せる事は無いかなー?」と思索していると、「エンジンが温まりにくくなっきている!」と答えが返ってきた。
子供を学校へ送るのに往復10キロ、標高差75メートル下って登るルートを走ってもエンジンは温まりきらない。
以前はもっと素早くエンジンは温まっていたはずだ。
10kmほど走行して、家にたどり着いてもまだ水温計の針は下の状態。
高低差75メートルを下って登って、10キロ走行してこの状態、出発前に数分の暖機もしている
長距離走行でも、水温計が表示するエンジン温度は以前より低め。
この水温計、適温は真ん中ではなく、左側1/4あたり。
冷却水がなかなか温まらないのは、なにかしら冷却系に問題がありそうだ。
エンジンが温まらない原因、思
エンジンが冷えている状態でもサーモスタットの弁が閉じきらない
サーモスタットの弁がすぐに開いてしまう
サーモスタットに異物が挟まって閉じきれない状態
いずれにせよ疑われるのはサーモスタット。
エンジンが温まっていないにもかかわらず、サーモスタットが原因で冷却水が流れ過ぎている状態だ。
状況を改善するため、エンジン・サーモスタットの交換を行なう事にした
エンジンの温度を随時調整してくれるのがエンジン・サーモスタット。
エンジンが作動するのに最適な温度付近で、弁を開閉し冷却水の流量を調整、エンジン温度を適度に保ってくれている。
取り付けている、サーモスタットの開閉温度は、確か79℃だった気がする。
購入時には外されていたサーモスタット
20年前この車を購入した時に、サーモスタットは取り外されていた状態。
その事は、当初なかなかエンジン温度が上がらなかったので、サーモスタットが付けられていない事に気が付いた。
平地を普通に走っていても、ゲージのCの位置に行くか行かないかの冷えた状態で、それ以上に上がらない。
当時、ケニアではオーバーヒートを防ぐ目的で、当たり前のように外されていたサーモスタット。今でも時々見受けられる。
サーモスタットの付いていない状態でも、上り坂などで負荷がかかっていれば、エンジンは温まり問題無くなるが、平地での走行、また特に長距離の下り坂などでは当然冷えすぎる。
マニュアル本には、サーモスタットを外して絶対に走るな!と書いてある。
エンジンの燃焼は、エンジンが温まって最適化されるわけで、温度が上がって燃焼効率が良くなり、 パワーが出るトともに、燃費も良くなる。
さらに、適正温度でのオペレーションとなるので、エンジン内部の磨耗も減り、寿命も延びる。
こんな感じで、サーモスタットを付けると良い事ずくめ。
サーモスタットが取り付いていない状態では、冷却水は常にマックスフロー、エンジンは適温まで上がらず、パワーも出ず、燃費も悪くなるので、エンジンにとっても、財布にとって何もいい事は無さそうだ。
20年前の当時はすぐにサーモスタットを購入し取り付けた。
それ以来エンジン・サーモスタットの交換は
していない。
一度、サファリ中のラジエータートラブルで、取り外したぐらいだ。
この車、冷却系では18年ぐらい前に一度ウォーターポンプを交換している。
20年間がんばって作動しつづけてくれたサーモスタット君。
いずれにせよ、サーモスタットは寿命だろう。
カー用品横丁、ナイロビ、ケリニャガへ買い物へ
愛車の1HZエンジンは30年以上前のものだが、いまだ生産され続けているエンジン。(日本国内では2004年までの生産)
僻地で使われるランクルHZJ79に使われている。
それにしてもマイナーチェンジはされながら、30年以上同じエンジンで同じ車が販売され続けているのにはなかなか恐れ入ってしまう。
1HZエンジンは、名機中の名機という事だろう。
我ながら納得。
1HZエンジンのサーモスタット、とりあえず自転車でひとっ走りして買いに出かけた。
サーモスタットは新しいものでも使えると見込んでサンプルは持たずに、ケリニャガ、カー用品横丁へ。
使えなければ返品交換すればいいのだ。
往復20kmの移動はいつものように自転車を利用!とにかく速くて気分も爽快!!!尚且つ、普段の運動不足までも解消してくれる。さらに、今だとシェディングの心配も無用になる!
時間短縮と運動不足解消、尚且つ運賃無料の経費節減でとで、一石三鳥+1。
走行距離は往復20km、標高差は120m、行きはよいよい帰りは怖いルートで帰りはずっと上り坂。1時間程度のサイクリング、120mの標高差を登り切って家に帰りつく頃には、心地よい汗をかき、心肺にも程よい負荷がかかり続けるので、戻ってきた時の爽快感は格別。
車で行くと、渋滞と、駐車場の問題。燃料代と駐車料金もかかり、とにかく時間は下手すれば自転車の2-4倍かかる。
購入したサーモスタット
運よく行き付けの、トヨタ系の部品屋で、いきなり見つける事が出来た。
購入したのは下のサーモスタット。
現行ランクル70シリーズ1HZエンジンに取り付けられている、純正品。
82℃ トヨタ純正品を4000シリングで購入 4500円ぐらい?
この時、まだ調子の悪いと思われるサーモスタットは、取り外していない。
記憶だと79℃のような記憶があるが果たして記憶は正しいか。
同じエンジン用、きっと取り付けられるだろう。
調子の悪くなったサーモスタットを取り外す
愛車ランクルHZJ75、1HZエンジンのサーモスタットは、エンジン右の排気側の、ラジエーター下部からエンジンへつながるホースパイプ、ちょうどエンジンの入り口部分に取り付けられている。
これら黄色い矢印で示したボルトとホースを取り外せば、サーモスタットは簡単に交換が可能。
サファリ中のトラブルでもスパナさえあれば手軽に取り外す事が出来る。上の二本が12mm 下の1本が10mm。
1本のボルトとホースパイプは、車の底に潜って取り外す。
ブッシュのトラブルでも簡単に取り外せる
冷却系の管の中は冷却水で満たされているので、作業前には排水を忘れずに。
排水しないで作業すると、びしょ濡れになってしまうのでご用心。
冷却水は再利用するので、きれいなたらいに排水した。
また、不凍液として動植物に有害なエチレングリコール等も含まれているので、そこらへんに捨てるわけにもいかないな。
昔のバスクリン、メロンソーダ、そんな色の冷却液、駄菓子屋にも10円でこんな色をした水で溶かす粉状の飲み物があったのを思い出した。
排水が終わったところで、サーモスタットを覆うカバーのボルトとホースチューブを取り外していく。
車高が高い車なので、車の底に潜り込むのにもジャッキアップは不要。
エンジンルーム内も今風の車と違って、スカスカ。
あれを外すために、別の部品、これを外さなければとかも無いので、どんな作業もとにかくお手軽、これもまたこの車に愛着の湧く理由だろう。
ブッシュの中での不具合でも、すぐにトラブルシュート、そして修理が可能だ。
ABSも、爆発物のエアバックも無いし、コンピューター制御もまるっきし付いていない。
バッテリーのネガティブさえ外してしまえば、安心して作業が行える。
結束バンドを緩めてチューブを取り外す
露になった古いサーモスタット
一見、異物も挟まっておらず問題は無さそうだけれど、20年間の開閉作業、疲れもドットたまってきたのだろう。
サーモスタット君、とにかくお疲れさん!
新旧サーモスタットを見比べた
新旧で形が大きく違っている。
ぱっと見でも分かるぐらいに、古い物の方が直径が大きい。
とりあえず、受け側の穴の直径よりも少しでも大きければ使えるだろう。
開閉温度は古いものが76℃、新しいものが82℃。
記憶の79℃は76℃の間違いだった。
1HZエンジンの作動適温が、マニュアルには86度とか88度とか書いてあるので、新しい物の方がエンジンを適温に保てそうだ。
古いサーモスタットは、以前から峠の長い下り坂ではエンジン温度が下がりすぎる感があった。
76℃から82℃に6℃上がる事によってそれも解消されるといいが。
新旧で形もけっこう変わった
新しい物の方が、直径は一回り小さくなった。
手元に残っている古い物の直径は64mm、新しいものは直径60mm
開閉便の直径は同じぐらい。
表面の素材はゴムだが、中に金属の補強が入っているのだろうか?
横から見てみると
新しい物の方が細長く開閉ストロークは少し長そうだ
古いサーモスタットは、金属部品もゴム部品も肉厚で頑丈な作り。
新しくなって全長が少し伸びて、その分開閉ストロークは若干大きくなっているように見える。
ピストンは新しいほうが太い。
パット見た感じ、そんな違い。
作動テスト
鍋に水を入れガスコンロで熱してから再び冷ましてサーモスタット開閉便の作動のテストを行なった。
新旧サーモスタット、開閉動作範囲
テストの結果、古い76℃の方が当然ながら速く開き始め、つづいて新しい82℃のサーモスタットの弁が開き出した。
作動は正常、温度計が無かったのが惜しまれる。
さらに水を温め続け、弁がどこまで開くか確認した。
新しいサーモスタットの方が古いものよりも弁がより大きく開く事を確認した。
冷却水の流量をより多く確保出来そうだ。
温度が下がっていく時の動作。
コンロの火を止め冷ましていくと、新しいものは素早く弁が閉じたが、古いものは76℃(推定)よりも温度が下がってもなかなか弁が閉じきらず、しばらくの間、開いた状態が続いた。
かなり冷ましてから、やっと便が閉じきった。
作動テストによって、エンジン温度がなかなか上がらないのは、サーモスタットの弁が一度開くと、なかなか閉じきらず、冷却水が流れ続けるのが原因だったと確認出来た。
早速新しいサーモスタットが使えるかどうか、エンジンの取り付け場所に合わせてみる。
かなりぎりぎり、
新しいサーモスタットをあてがってみると、サイズはぎりぎり使えるレベル。
シリコンガスケットをたっぷり使えばとりあえずは大丈夫だろう。(後に計測、受け側の穴の直径は59mm弱だった、ぎりぎり使えるレベル)
てな事で取り付け作業開始!
こびりついた古いシリコンを全て引き剥がし、金属部分が触れ合う部分は鉄ヤスリ、その他の場所の異物は、マイナスドライバー、金ノコ、紙やすりなどでそぎ落とす。
白い結晶は、きっと水漏れ停止剤、ストップリークの成分なのだろう
古い、若干ダメージのあるラジエーターを使用しているので、ストップリーク(ラジエーターの漏れ止め剤)を混ぜて使用している。
これを入れていると、冷却水が漏れ出してもすぐに漏れは止まってくれる。
それが原因か、漏れたところにこ白い結晶が出来て穴を防いでくれるのだろう。
結晶がへばりついている部分、けっこう漏れてはふさぎが繰り返されていたものと思われ、緑のコケのようなものまで発生していた。
コケ?冷却水の着色剤だろう。
白い結晶をそぎ落とすと、金属部分はそれほどダメージは受けておらず、まだまだ使える。
接触面を整える
サーモスタットハウジングとエンジンの接触面をやすりできれいに整える。
ハウジングの素材はアルミなので、鉄のエンジンブロックと触れ合う部分は多少腐食も進行している。
これが異種金属接触腐食なのだろう。
鉄よりもアルミのほうがイオン化しやすく、プラスの電荷を帯びてどんどん腐食される。
冷却水に直接触れる、内側の腐食が進行している。
31年間でこの腐食。
まだ次の31年も問題なさそうだ。
サーモスタットの周囲についているゴム製ガスケットは使いまわした。
サーモスタットが遊ばないように、シリコンを多めに、塗りたくる。
カバー側にも塗りたくって、後はカバーとパイプを取り付けるだけ。
シリコンガスケット、カメラを直そうとしたら一度ポトリと落ちてしまった
順調と思いきや、手がカメラに触れ、それを直そうと手を離した隙に、シリコンを塗ったサーモスタットがパカッと外れ落ちてしまった。
すぐ下にあるオルタネーターが受け止めてくれたので、土の地面に落ちる事は無く一安心。
しかしながらシリコン表面はぐちゃぐちゃに。
カバー側にもシリコンを塗りたくったので、これ以上いじっても、どつぼにはまるだけと思い、この状態で元に戻した。
ジグ(小さな弁)の位置、真上に付けろと説明を見たが横につけてしまった。
アチャチャチャチャ!大丈夫か?そのうち直そう。
初期のモデルにはこのジグ付いていなかったようなので、それほどこだわる必要も無いのかもしれないが、気分は良くないな。
いずれにせよこのジグ、何のために付いているのだろうか?
上側にセットする理由も?
カタチ的には金属弁がついていて、ラジエーター側からの流れはブロックしエンジン側から、逆流するための構造になっている。
エンジン始動直後、エンジンが冷えていてメインの弁が閉じている状態の時、エンジン側からの冷却水プレッシャーを逃がすためのものだろう、きっと。
上側に向けて付けるのはより温まった冷却水を逃がすため?
排水のためだったら下側に付ける筈だ。
適当ですまぬ。
そんな適当なブログです。
シリコンが乾く前にしっかりと締め付ける
サーモスタットハウジングを固定する3本のボルトをしっかりと締めて、ラジエーターをエンジンをつなぐホースパイプを取り付け、バンドをしっかりと絞めつけ、作業は完了。
あとは、ラジエーター下のドレインコックを閉めて、冷却水を元に戻すだけ。
マニュアルを見てみると、締め付けトルクは、60、70型ランクルでは18Nm、80型ランクルでは21Nmとなっている。
力ずくで締め付けるとオーバートルクになってしまうのでご用心。
とりあえずシリコンが乾くまでしばらく待つ事に。
待つ間、リアアクスルのオイルシールの交換をして時間をつぶした。
前回開けた時にオイルシールがヘタっていたので、オイルシールは2個、サーモスタットと一緒に購入していた。一緒といっても店は違う。
6本のナット、ワッシャ、コーンワッシャを取り外し、アクスルを引き抜く
ヘタッたオイルシールと交換する新しいオイルシール
オイルシールをマイナスドライバーで取り外し、新しいシールを取り付ける。
ゴム部品なので交換は簡単。
液体シールが乾くまでの間、この作業を左右で行った。
古いオイルシールのダメージは右側の方が組み込まれたバネが裂けるほど激しい状態だった。なぜだろう?ちょっといやな予感がする。
こちらのアクスルシャフトと、ハブボディを接続するスタッドの締め付けトルクは33Nm、こちらも締め付けすぎにはご用心。
冷却水充填
作業を終えるとちょうど1時間プラスが経過。
シリコンガスケットも乾いただろう。
という事で、冷却水を戻していく。
このファンネルは愛車の標準装備品、いろいろと便利。
このファンネルのノズル横にはエア抜き用に穴を空けてある。その穴のおかげで、ホースをフニャフニャと指で押すと、冷却水はボコボコ音をたてながら、ラジエーターに入っていく。
こぼれないように、少しずつ注ぎ足す
ゆっくりと入っていくのでけっこうな時間がかかる。
全てのクーラントが戻ったところで、
エンジンを始動して冷却水漏れが無い事を確認。
ヒーター全開にして、ヒーター経路にも冷却水が行き渡っている事を確認。
最後に冷却水レベルを再度確認。
ラジエーターキャップを閉じて作業終了
さて、残るはテスト走行。
テスト走行
サーモスタットがちゃんと開閉しているか、走行テスト、多少負荷をかけて走行してみる。
以前よりもエンジンは素早く温まり、適温に保たれる事を確認した。
排気量4200ccで、オイルも10リットル、冷却水も10リットルほど入っている、乗用車としてはでかいエンジンなのですぐに温度が上がる事は無いが、子供の学校への下り道、4~5km走行するだけでエンジン温度は適正になるようになった。
エンジン温度が十分に上がる事によって、アイドリングも非常に滑らかになり、尚且つ滑らかに、力強く加速するようになった。
その分アクセルを踏む量が減ったので燃費の向上が期待される。
水温系の針はこの位置に保たれるようになった
上は、朝、子供を学校に送って帰ってきたときの水温計。
早朝なのでまだ暗い。
作業後200キロほど走ったが、街乗りで、燃費は1割ほど良くなったようだ。
以前は、エンジンの温度が上がっていない状態でばかり走っていたからだろう。
サーモスタットを交換し、燃費もパフォーマンスも思った以上に改善した。
これほどまでに、パフォーマンスが激変するのであれば、もっと速く作業するべきだと思う。
是非是非、愛車に長く乗られる方、長年サーモスタットを変えていないのであれば、交換する事をオススメする。
後日談
古いサーモスタットよりも冷却水の流量が増えたようで、長い上り坂でも温度が上がりにくくなった。
それと、ウインドスクリーンのデフォッガー(曇り止め)、効きが良くなった。
エンジン温度が保たれるようになったおかげでだろう、隣接するギアボックスも適温に保たれるようになってか、ギアの入りまでもが良くなった。
良い事ずくめ。
長距離走行の燃費が、9.9km/lから12.1km/lに向上
その後の長距離走行の結果(ナイロビ、マリアカニ間)、標高差1400メートル程の下り基調だが464kmの走行距離を38.4リットルの燃料消費で、燃費12.1km/リットルを叩き出した。それまでの記録は9.9km/リットル。長距離走行でも下り基調だと燃費は相当に良くなる事が分かった。
サーモスタット交換を動画にまとめたので、ご興味のある方は、クリック!
おわり
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