40年も前のカメラとレンズだとは思えない、斬新なデザイン!?
ニコンのオールドレンズ、それほどオールドでもないですが、Aiニッコール50mmf1.2が星空撮影にどれほど使えるものなのか検証しました。
絞り開放f1.2からf16の写りの変化、中心部と周辺部、APS-C周辺部、使える絞り値を探っていきます。
コンテンツ
この記事を書いているのは、アフリカを拠点に活動するフォトグラファー。
日本ではカメラ販売の経験も数知れず、そんなカメラ好きが書いているブログです。
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いまだ良く使うレンズ、ニコン MF 50mm f1.2
このオールドレンズのAis50mmf1.2、古いマニュアルレンズだが良く写る。
写りは、逆光でフレアなど出やすく、最近のレンズにはかなわないが、線も細く、独特の発色とボケ、味わい深い描写をしてくれる。
もしかしたら、筆者がいちばん使うレンズの一本かもしれない。
ニコンフィルム一眼レフカメラ、F3Tとこのニコン 50mm f1.2の組み合わせ、ボディ含め、いちばんクールなデザインだと、いまだ思っている筆者。
このF3Tは今から30年前、東京、中野のカメラ屋さんで中古で買ったもの。
自動化が更に進化、もはやテクニックなどいらない?
世の中自動化の嵐が吹きすさぶ。
カメラ業界も例に漏れず、一眼カメラがミラーレス化。
ニコンは一眼レフカメラの開発を止めてしまうという。
日に日に進化するオートフォーカス。
ますます高性能化する手振れ補正。
被写体を把握するカメラ。
画面の隅から隅まで、人はともかく動物でも鳥でも、目にフォーカスを合わせ続けてしまうとか。とにかくものすごい進化。
カメラマンは技術的に何も考える必要が無くなった?
カメラを抱える力があれば、小さな子供でもブレずにピントの合った写真が簡単に撮れてしまう。
まさに、そんな時代だ。
趣味で撮る分、正直そこまで必要だとは思わない。
自分自身が楽しめるカメラで撮っていればいいのだ。
魅力的な一眼やレンズ、中古市場にいっぱい出回っている。
オールドレンズを使ってフィルムで撮ったりするのも自由自在、色々なかたちで、写真は今でも楽しめる。
ま、フィルムは財布に厳しいな。
それにしても、ニコンが一眼レフをやめてしまうとは、とても悲しいのが本音。
長い間ニコンのカメラばかりを使い続けてきた筆者、ニコンにはけっこうな愛着を持っているのだ。
アフリカ、ケニアの売れ筋カメラ
現在管理人の住んでいるのは、ケニア共和国。
首都ナイロビには、カメラショップがいくつかある。
売られているカメラの多くがキャノン。ソニーやパナもあるが、キャノンが多いかな。残念ながらニコンはあまり見かけない。
最近、ニコンのサービスやショップがナイロビにも進出している。
でも、それ以外の電化製品店、カメラ専門店などに並んでいるカメラはキャノンばかり。
ニコン / マイクロフォーサーズ 電子接点付きマウントアダプターを探しているのだが見当たらない、キャノン用だと大抵在庫があるのだけれど。
いまだ、店で見かけるカメラの多くは、ミラーレスよりも一眼レフが多いように感じる。
工場を日本に設けているキャノン、廉価版の一眼カメラも日本製、ボディ下にはMADE IN JAPANとしっかりと印刷されている。それだけで大きなブランド力。
MADE IN JAPANだけで買っていくお客さんも多いのだ。
という事で、ケニアでは、メードインジャパンの入門者向けの一眼レフが売れ筋に感じる。
ニコンはカメラ生産工場を日本から海外へと移転した上、入門者向けの一眼レフカメラまでやめてしまった。
キャノンと全く逆を行っている。
話があらぬ方向に行きそうなのでここら辺で、
星野写真で絞りと写りの変化を見比べた
今回のブログではニコン、MF Ais Nikkor 50mm f1.2sの描写性能を見るため、星空を開放から最小絞りまで撮り比べた。
オールドレンズで、どれだけ最近のレンズに対抗出来るものなのか?
ただ、比べる新しいレンズは持っていないので、撮り比べはしていない。
今回の作例は南十字星(南十時座ですが、南十字星で統一します)をほぼ中心に撮影した星野写真。
ニコン、MF 50mmf1.2で、開放f1.2から、最小絞りf16まで撮り比べてみた。
露出は30秒で統一、絞りの変化に合わせて開放f1.2ではISO200、最小絞りf16ではISO25600とISOを変化させ、絞りによる明るさの変化に対応した。
ISOの設定、f1.2とf1.4は若干正確ではないが。
露出は30秒、日周運動による流れを抑えるため、ケンコー・トキナー製のポタ赤、スカイメモで追尾撮影した。
f11のISO12800とf16のISO 25600はニコンD800Eの感度設定で+1と+2になる。
ノイズが多く、ダイナミックレンジも狭く、ホワイトバランスもかなりあやふやになる。
新しく現行モデルであるD850も手元にあるが、拡大するとモザイクノイズが目立つ。
それと比べて画質がいいD800Eを使用している。
画素数が高いからと、一概に画質がいいわけでないのだ。
今回の作例で、ISO変化の違いによるD800Eの写り、10年前のカメラの実力がどれほどのものかも見て頂きたい。
まずは開放f1.2から最小絞り16までノートリミングの作例を並べた。
見ていただきたいのは、開放付近の周辺減光の変化
f1.2
開放f1.2だと、周辺光量の落ち込みかなり厳しい。
中心部の明るい星星、かなりずんぐりボッテリしている。
これでは、星野写真には使えないな。
これだけ見ると、性能の悪いしょぼしょぼレンズだな。
f1.4
f1.4、半絞り絞っても、多少良くなるものの状況はあまりかわらない。
周辺部はまだ、リング状に流れている。
f2.0
このレンズf2.0に絞ると、f1.2、f1.4と比べて別物レンズのように一気に引き締まる。
パッと見では、ほとんどの星が点像になる。
周辺光量落ちは、まだけっこう目立つ。
f2.8
f2.8、天体写真で良く使う絞り設定。
感度と露出のバランスがいちばんいいかな?
赤道儀が無ければ大抵この設定。
星空を撮るのに一番使使う絞り設定。
周辺端部分はかなり暗くなる。
f4.0
f4.0に絞ると、周辺光量落ちは、かなり軽減、ほとんど見えなくなった。
星は周辺部まで小さな点像。
f5.6
絞りf5.6、最高画質?周辺光量落ちは、ほとんど分からなくなった。
星も隅の隅まで小さな点像だ。
最も画質がいいかなと解像力が必要な普段の撮影でよく使っていた絞り値f5.6。
今回撮り比べてみて、実際最も画質がいい事を確認、納得がいった。
f8.0
f5.6とほとんど違いは分からないが、感度を1段上げた分ノイズが増えて汚くなった。
星空撮影では画質的にメリットは見あたらないので、f8まで絞る事は無いだろう。
f11
f11、マゼンダに色転び、isoをここまで上げると、ホワイトバランスはあまり関係なくなってきた。
星を撮るのにここまで絞る事はまず無いでしょ。
星野写真で、ここまで絞るメリットは見当たらない。
f16
50mmf1.2の最小絞りf16とD800E最高感度ISO25600。
画質はさておき、回折現象でもっと画質が落ちるかと思っていたがそれ程に落ちないようだ。
このサイズだと分からないか。
感度が上がるというよりも、シャドーのしまりが無くなってよりガサガサになっただけ?
そんな感じかな。
もはやレンズについて、とやかく言える画質では無い。
作例を比較して
まず、上の作例から見比べていただきたいのは、レンズの周辺光量低下。
開放付近f1.2とf1.4だと、周辺はものすごく落ち込む。
f2.8でも最周辺でははっきりと落ち込むが、f4.0に絞ると、落ち込みはあまり目立たなくなり、f5.6でほとんど画面全域にわたってフラットとなる。
撮影地の画面下部、明るく見えるが、民家による光害が原因。
星像は、開放付近で中心部でも、かなりボッテリするが、f2.0に絞ると一気に引き締まる。
最高画質はf5.6、周辺光量もほとんど落ちない上、星像が中心から画面の端まで最も小さな点像で写ってくれる。
D800EのISO表記の最高感度はISO6400、そこから上は、+1、+2と表記されている。
最高感度の+2、2段分高感度のISO25600相当だが、ISO6400を超えるとホワイトバランスが大きく転び、ノイズも目立つので、実用でない事が分かる。
ISO以外のカメラの設定は全て一緒。
画像を出すにあたって整えたトーンなどの設定も全て統一している。
感度を統一するべきだけど。
あ、それは撮影時、レリーズ持ってなかったので、ごめんなさい。
さて次に見ていただきたいのは、開放画質。
ニコン、50mmf1.2の開放の、解像度を検証する
お次は上と同じ作例を拡大して検証する。
まずは画面短辺端あたりの画質から。
写真下の黄色い矢印の星。
昔々、天空に輝く星星をつなげて星座を作ったヨハン・バイエルはケンタウルンス座の恒星の一つとして設定したもの。
実際は、無数の星が集まって出来た状星団。ω(オメガ)星団と呼ぶ。
まずは、この部分を拡大して検証する。
英語で失礼致します。
このオメガ星団部分を拡大、レンズの解像度を検証
オメガ星団、黄色い矢印の部分をピクセル200%に拡大したのが下の写真。
オメガ星団は全天で最も明るく大きな球状星団。
ちなみに、南十字星の左に輝く明るい星の左側、矢印でAlpha Centauri アルファケンタウリは、ケンタウルス座でいちばん明るい星、地球から最も近い恒星系で三重連星。光の速さで4.3年の距離にある。
今回の記事では、あんまり関係ないな。
オメガ星団、f1.2
開放f1.2でここまで星像がシャープに出るのには驚いた
開放f1.2画面中心部から短辺の端辺り、多少ぼやけるが星像は点に近く、このレンズの優秀さがうかがえる。
オメガ星団も周辺部の星が、分離されて出ている。
開放f1.2でも、ポートレート等できれいな写真が撮れるのは、芯がしっかりしているからなんだな。そんな事が良くわかる作例。
この部分f2.8に絞って撮ったのが下の写真
オメガ星団、f2.8
ISOが800となるので、感度が上がった分ノイズが増えるが、2段半絞る事によって星像はよりシャープに。
星の周辺に広がる赤と青のフリンジは後処理で消す事は可能だが、そういった後処理は今回の作例では行なっていない。
解放絞りf1.2でも、中心から短辺端のこの辺りまで、それなりにシャープに出してくれる。
さて、画面のもっと外側は、どの程度に写るものか?
画面、長辺端の拡大像
次に画面長辺端辺りの画質を検証。
場所は、2段飛んで上の作例のピンクの矢印、画面右端の四角で囲った領域。
エーターカリーナ星雲部分をf1.2開放からf16最小絞りまで、ピクセル等倍にしたものを並べた。
画面右端オメガ星雲、f1.2
f1.2開放、ウリャリャリャ!、星に羽が生えた。
周辺部の星像はひどい有様。
ただ、微光星の羽は目立たない、羽よりも中心部が明るい芯が残っているのが救いか。
f1.2でも、これぐらい周辺部になると2段以上暗くなっていそうだ。
微光星が暗くつぶれてしまっている。
さて、カチャカチャと少しずつ絞って行く。
光量を調整するため、その分ISOで調整。
本来レンズの絞り比較であれば、シャッター速度を変えるべきだが、今回はISOで失礼いたします!
機会があったらちゃんとやってみます、、、?
画面右端オメガ星雲、f1.4
f1.4、開放f1.2とあんまり変わんないな。
画面右端オメガ星雲、f2.0
f2.0、星の羽が短くなってきた。
微光星が増えてきた、周辺光量減光も改善されてきているのだろう。
画面右端オメガ星雲、f2.8
f2.8、かなり点像に近くなったが、まだ羽だ。
画面左下の赤い光芒がエータカリーナ星雲。
f2.8に絞れは、十分に使える画質に、なる事が分かる。
新しい宇宙の目、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡のトンデモ超高解像度の写真が最近公開された。
最初に公開された4枚のうちの1枚は、この領域。
このトンデモ超高解像度望遠鏡、比べるとハッブルが赤ん坊のように見えてしまう。
これから公開されていく画像、新発見、他の惑星系の詳細などなど、考えるだけで胸がときめくのだ。
おっさんでありながら、今、小学生の頃天体望遠鏡を買ってもらったのと同じ様な気分だ!
また、話がそれはじめた、今は50mmf1.2周辺部の絞りと画質について!!!
画面右端オメガ星雲、f4.0
f4.0、ほとんど周辺まで点像って言ってもいいかな?
良く見ればちょっといびつだけれど。
感度とのバランス、シャッタースピード30秒だと最も総合画質が高そうだ。
画面右端オメガ星雲、f5.6
f5.6、んん、全ての星が小さな点像だ!
シャッタースピードが伸ばせるのなら、f5.6でたっぷり露出を与えてやるのが最も画質が良さそうだ。
D800E、感度がISO3200だとこれぐらい荒くなる。
高感度ノイズ除去はノーマルだったな確か。
星像が全領域で点に写り、周辺光量低下もほとんど見られないf5.6の設定が、最高画質で間違い無いだろう。
SO640で3分ぐらい露出を与えると、とってもいい感じの星野写真が撮れそうだ。
画面右端オメガ星雲、f8.0
f8.0、紛れも無い点像だが、ノイズで見づらくなって来た。
D800Eで数字で書いてある最高感度、ISO6400。
星を撮るのにf8は暗いな。
f8.0まで絞ると、星像はf5.6のものよりも微妙に大きくボテッとなるかな。
光の回折現象の影響なのだろう。
画面右端オメガ星雲、f11
f11まで絞って星を撮る事は普通しないが、撮ってみた。
回折の影響はf8と比べてもあまり変わらないかな?
ノイズが多すぎてはっきりしないな。
感度+1、ISO12800まで感度を上げると画質どうのこうのでは無いな。
ホワイトバランスもずっこけた、マゼンダがかってきた。
一般的には使える感度では無いな。だから+1なんだと改めて納得。
画面右端オメガ星雲、f16
f16、なんじゃこりゃ?
心霊写真?手を広げた人の上半身が見えてきた???
フードをかぶっている。
見えるだろうか?
総括して、このレンズの最高画質はf5.6のようだ。
光が十分足りない場合、周辺は若干落ちるが、f4も悪くない。
f2.8は、周辺光量がそれなりに落ちるのと、周辺部の星像、リング状に羽が残るが、使えなくは無いレベルだ。
APSCサイズまでだったら、f2.0で十分行けそうだ。
周辺部に行かなければ、f2.0の画質けっこういける。
APS-Cサイズにクロップ、f2.0
作例をAPSサイズにクロップ、絞りはf2だ。
APS-Cサイズ、クロップ、右上端、ピクセル等倍
画面右上端を等倍で出したのが上の写真。
APSCだとf2.0に絞るだけで、画面の端から端まで星像がほぼ点状に写る事が分かる。
ちょっと三角だけど。
画素数は1600万画素。
次に開放付近の妙なケラレについて触れる。
開放付近、中心部の妙なけられ
f1.2開放、写真のど真ん中を等倍にして出した。
星像の下側、カクッとえぐられるようにケラレている。
これが何によるケラレなのか、まだ分からない。
写真下部分という事は、レンズを通り抜けた光がカメラの上側、何かにけられている事になる。
跳ね上がったミラーの裏側に、何か蹴られるようなでっぱりがあるのだろうか?
このケラレ、f1.4に絞ると若干収まる。
そして、f2.0に絞るとけられは完全に消える。
ケラレが完全に無くなるだけで無く、全ての星がギュッと引き締まる。
別のレンズで撮ったようだ。
このレンズ、開放f1.2やf1.4だとソフトレンズのようにフワッと写るのだが、
f2.0に絞ると一気にキリリと引き締まる。
上の写真を見比べて納得。
f1.4とf2.0でこれだけの変化があるという事は、f1.8前後の写りの変化は、非常に大きそうだ。
総括として
以前書いたので、レンズの作りなど、細かい事は省く。
非球面レンズを使っていないしっかりと組み立てられたレンズ、絞るほどに星空も周辺までフラットになり、良く写るという事が、今回比べてよく分かった。
50mmf1.2はまさしくそんな高性能な1本。
星野写真ではf4前後に絞れば、最新レンズと比べてほとんど遜色無い写真を提供してくれる。
新レンズとの、違いが出るのは開放付近、それも周辺部。
最近のレンズ、周辺部、開放付近でもしっかりと画質を出すため、非球面やら、特殊低分散ガラスやら、超高屈折ガラスなどなど、昔は高価でなかなか使えなかったガラスが、たっぷりと惜しみなく使われている。値段にも繁栄されているがな。
またまた、周辺部の光量を稼ぐため、鏡筒を太くドデカレンズになってしまうのだろう。
どのレンズも巨大だ。
最新超高画質レンズを使ってみたいが。
まだまだ、このオールドレンズ、十分使っていけるな、と今回レンズをテストして感じた。
新しいもの、いい物を見ればきりが無いし。
要はいかに、新しいレンズにない特性を生かし、作品に生かし、自己満足出来るか。
そういって、自分に言い聞かせるのである。メーカーやカメラ業界に貢献してないじゃん。
このレンズ販売が中止されて久しい。
時々、ネットの中古市場でこのレンズを見ると、とてもうれしくなるのだ。
もしオールドレンズにご興味あるのであれば、それほどオールドでもないけれど、
このレンズはオススメです!
新レンズには無い、癖のあるやつですが。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
おわり
上のシグマレンズでも同様のテストがしてみたいものだ。
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