以前50mmf1.2についてご紹介したので、マニュアルレンズ2本目のご紹介となります。
Ai Nikkor 24mm f2s と純正フードHK-2
いつもながら、管理人の妄想と独断と偏見、誤字脱字、間違えなど多々あるままですが、とりあえずはアップする事にします。
このブログの管理人はアフリカをベースに活動するフォトグラファー、テレビの撮影やその他もろもろの写真撮影を行なっている。
日本ではカメラの販売経験も豊富。
目次
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広角の定番の24mm?
ズームレンズが全盛になる以前の昔、50mm単焦点レンズがボディとのセット販売されるのが一般的だった。
標準レンズといえば、誰もが文句を言わず50mm、そんな時代。(1980年代)
80年代ニコン最高の組み合わせ、F3Tと50mmf1.2 そういえばノクトがあったが58
50mmの焦点距離、対角の画角が46度と、程よい遠近感で、見た感じに撮りやすい。値段もそう高くない上、f値は1.4と明るいものがほとんど。
値段と性能、コスパの非常に高いレンズという事で、セットレンズとしての選ばれていたのだろう。
50mmは管理人も大好きなレンズのうちの1本で、マニュアルのオールドレンズ、Ai Nikkor 50mmf1.2sは今でもよく使用している。(上写真のレンズ)
ただ、50mm一本で撮影に挑もうとすると、もっと広い範囲が撮りたくなってくる。
そんな時に欲しくなるのが広角レンズなのだ。
24mmにするか、28mmにするか、結構迷うところ。
画角の違いは28mmの対角74度に対して、24mmは対角84度と、その差は10度。
この10度の画角の違い、撮影していると、結構大きな違いに感じる。
ズームレンズはかなり昔からあったが、当時のズームレンズは、単焦点レンズと比べると、画質が安定しておらず、大きく、重く、なおかつ値段が高い。
やはり値段が安く、画質の安定してコンパクトな、単焦点レンズを選ぶ事になるのだ。
50mmの次の広角レンズの定番といえば28mmだが、撮影していて広角らしい広角となると、24mmからだなと勝手ながら思うのだ。
28mmは、室内撮影等では画角があまり広くないので、取り回しが難しい。(個人的感想、というか全て個人的感想です)
画角的にパースが強く発生しない分、28mmは標準レンズ的にも使える万能レンズ、だからそれ1本で結構何でも撮れてしまう。
それを物語るように、コンパクト単焦点レンズ搭載カメラには、28mmレンズが搭載されているものがけっこうある。代表選手として、長年世代を重ねて販売され続けているリコーGRシリーズがあげられる。
28mmと比べて24mm になると、画角が広い分、遠近感、パースがかなり強調されるので、標準レンズ的に使うのは難しくなる。
周辺部はかなり歪んでくる。
画面隅に被写体を配置すると、中心部から外に向かって伸びる感じで歪む。
という事で、標準レンズ的要素が薄れ、完全な広角レンズになるという事で、24mmが、広角レンズの代表と、管理人は勝手に考えるのだ。
全てはフルサイズ相当でのお話。
24mmは50mmと最適な組み合わせ(個人的結論)
愛用のAi Nikkor 50mm f1.2s との発色や味わいを統一しようとなると、当然ながらニコン短焦点広角レンズが欲しくなってくるのであった。
広角レンズとして24mmが上記の事柄から50mmとの最適なコンビネーションという結論に至り、購入を決めた。すでに20年以上前のお話し。
24mmも50mmも、どちらも標準ズームレンズの画角の中に入ってしまう焦点距離。
単焦点レンズの自由自在に変えられない画角、一見不便に感じる。
そんな単焦点レンズ、使ってみると多くのメリットがあるのだ。
単焦点レンズのメリット
短焦点レンズを使う理由はいろいろとあるものだ。
オールドレンズのメリットと共に、ちょっと思いつくままに上げてみた。
単焦点レンズの魅力
撮影前から頭の中に画角のイメージ、仕上がりのイメージがしっかり作れる
撮影時も、固定された画角の中、よりフットワークを生かして撮影する事になるので、結果が良くなる事が多い
遠近感のパースなどが固定、統一されるメリットがある
その焦点距離において、各種収差補正が最適化されたレンズ設計。使用レンズの少なさによる抜けの良さと、発色の良さ、キレの良さ
ズームレンズと比べると、軽量コンパクトで明るい。
自然なボケ味
管理人は、ズーミングのフットワークのいらない被写体、自らが動けば用が済む被写体では、好んで単焦点レンズを使用する。
さらにオールドレンズの魅力が加わる。
オールドレンズの魅力
補正しきれていない収差の味わい
カチカチにシャープに写りすぎない、柔らかさ
フレア、ゴースト、ハレーションなどの発生しやすさ。うまく生かせば、被写体を効果的に表現する特殊効果になったりする
当時のコーティングによる当時の発色の再現、今とは違う独特の発色
高精度で加工された金属部品を多用して作られた、物としての魅力
マニュアル専用なので、マニュアルでの操作感は格別。写真はもとより動画でも思い通りにピント合わせが行える
とにかく唯一無二の個性的な写りをしてくれる、メーカーごとに違った写り
レンズ開放付近に残る球面収差が美しいフォギー効果を与えてくれる
驚くほど耐久性のあるゴムローレットの滑り止め(ニコンAiレンズ)
補正し切れていない収差が、独特の個性的な描写を生み、逆に特殊効果として、良い働きをする事が結構あるので、おもしろい。
ここまで書いたら、新レンズの魅力も思いついたまま上げると
高次元にほとんど確認できないくらいまで補正された収差たち。
超高画素センサーカメラでの、超高画質撮影でも十分対応出来るほどの解像度を持ったレンズたち。
内面反射を極限までおさえられたレンズデザイン。ゴースト、フレア、ハレーションがほとんど発生しない。
レンズ表面のコーティング、極限まで高められた透過率、ほとんど無色透明のクリスタルクリアー。
高次元に組み合わされた、特殊ガラス類、非球面ガラス、等々ふんだんに使われているにもかかわらず、昔と比べれば安価な価格。
めちゃくちゃシャープで、その解像性能は実物を見た以上と思うほど。
レンズの性能が高性能に、切羽琢磨され突き詰められる程、メーカーごと、レンズごとの違いが消えていくように感じる。
単焦点レンズだと、古いレンズでもそこそこの性能を持っているので、現在のフルサイズデジカメと組み合わせても結構使えるのだ。
多少残る収差や、若干の抜けの悪さによるハレーションやフレアなどが、写真に味わいを与えてくれる。
最近のレンズが純水だとすると、古いレンズはお茶って感じかな。
前置きが長くなってしまったが、とりあえず24mm に話を戻す事にする。
この24mmf2は7枚の絞り羽根を使用している。
レンズ後部から覗いてみたのが下の写真。
10群11枚のAi Nikkor 24mm f2s f2.8に絞ってのレンズ内
この24mm、購入したのは20年ぐらい前のはるか昔、中野の店で中古で購入した。
ニコン純正のオートフォーカス、AF Nikkor 24mm f2.8もあったが、ズームレンズと変わらないf2.8の明るさと、プラスチックむき出しのプラモデルのような安っぽいデザインがどうも好きになれず、MFレンズを選ぶ事にした。
MFのf2.8もあったが、一絞り明るいマニュアルのAi Nikkor 24mm f2.0を購入した。
f2.8とf2の明るさの差、これは大きい!
短焦点レンズを購入するからには、ズームレンズより明るくなくては、というのが管理人のモットー。
上の写真、Ai Nikkor 24mm f2s をf2.8に一絞り絞ったレンズ内遮光の様子。
内面反射も多少見えているが、当時のレンズとしては優秀だろう。
今思うと、オールドレンズ、多少フレアを残すため、わざと内面反射を残していると感じる事もある。
実際どうなのだろう?
もしかすると、レンズ内面に多少の反射面を計算して残し、フレアを出していたのかもしれない。
使用感
シットリマイルドなフォーカスリングと一段ごとにクリックの付いた絞りリング
当時のほとんどのレンズには、当たり前のように施されていたものだが、今ではありえないようなレンズ情報の掘り込みとさらに色分けされた塗装。
絞りリングは一段ごとにクリックが付いていて、操作感は良好だ。
Aiとなって必要なくなった、絞りリング上部の絞り連動カニづめだが、何かニコン、マニュアルレンズのシンボルのようにも感じる。
光学的にカメラのファインダー越しに見られたレンズの絞り値、その絞りリング手前の小さな数字に光を導くように、小さな穴がくり抜かれている。
ここら辺の細かな気遣い、当時のニコンらしさ、ものづくりの真面目さを感じる。
当時ニコンの有料サービスで、このカニづめを取り外して、ネジ穴を飾りねじで埋める作業を行っていた。(2000円ぐらいだった気がする)もちろんそんな事はしなかった。
ニッコールマニュアルレンズ、この爪を取ってしまうと、ニコンレンズらしからぬ姿になり、何か正体不明に見えてしまうからだ。
パンフォーカス撮影に便利な表記
レンズ上部に記された、パンフォーカス撮影に便利な表記。
数字を見なくとも、色の違いでピントの合う範囲が一目瞭然、広角レンズでパンフォーカス撮影する際には非常に重宝する。
そもそもパンフォーカスで撮影するのにオートフォーカスはいらないのだ。
上の写真では、青いライン、f16に絞ると、だいたい38cmから1mの間でピントが合うという事が分かる。
ただ、今時の高画素デジタルで撮影するとなると、この範囲の半分ぐらいを見たほうが良いのかもしれない。
このピントの合う範囲というか、合っているように見える許容範囲、被写界深度といったほうが正しいだろうか。
レンズは焦点面だけにピントが合うのだが、若干ピント面からずれてもある程度まピントが合って見えるもの。
点光源の被写体、ピント面からずれるにつれて、少しずつ円形状ボケが広がっていく。
そのボケた円の大きさ、ピントが合っているように見える範囲のボケの円を、許容錯乱円と言う。
その、許容錯乱円の直径、フィルム時代は31.4μと規定されていたらしく、対角18cmのポストカードの写真を45cm離れて見て、視力1.0の人が、ぎりぎり分解できる目の解像度だそうだ。
今時の高画素カメラで撮影して、大画面でピクセル等倍などで出してみるものならば、31.4μの円など、とても大きくボケて見えるだろう。
ちなみに画素数3600万画素のD800Eのピクセルピッチは4.88μで、許容錯乱円の大きさは6.4ピクセル分の直径の円となる。
面積で32ピクセル。
今時の一眼やミラーレスではかなりでかい円となってしまう事が分かる。
ただ、写真の本質は全体の雰囲気、そういった点では今も昔も変わりなく、このパンフォーカスの範囲の表記は今でも目安として十分使えるものだと感じる。
今時の距離目盛の付いていないレンズ、パンフォーカスで撮るのは結構大変だ。
距離目盛があれば、目測での撮影のほかに、
フラッシュの絞り、ISO、距離目盛りから、設定するべくガイドナンバーの算出も出来るのだ。
フラッシュはオート前提なのだろう。
撮影情報をほとんど教えてくれない、今時のレンズ
距離目盛もなければ、パンフォーカスの表示も省略されてしまったものが多い、最近のレンズたち。
カメラが、撮影者に対して、
「俺のやる事に黙って従え!口出しするな!」とでもいっているようである。
もしくは、「私のやる事に対して、いちいち口出ししないでちょうだい!!」かな?
カメラの中で何が起こってるのか、レンズは何も教えてくれない。
そんな口うるさく意地汚いレンズに対して、隠し事なく、黙っていつでも付いてきてくれる相手がマニュアルレンズなのだ。
撮影は、撮影者とレンズ、カメラの共同作業。
そんなマニュアルレンズ、手振れも精密に再現してくれる。
(ボディー内手ブレ補正だと補正されてしまうが。)
マニュアルレンズを使っても、ハイテク手振れ補正の恩恵が受けられるという事でもある。
そんなやさしい魅力もマニュアルレンズにはあるのだ。
上手く取れれば、撮り手のおかげ、失敗しても、撮り手のせいだ。
最新カメラだときっとこうなるのだろう。
上手く撮れれば撮り手のおかげ、失敗したらカメラのせい。
最近のレンズは秘密主義?撮り手はアホだとでも言わんばかりで、何もいじられたくないように思ってしまう。
それとも、そんな情報伝えるよりも、シンプル イズ ベストで、情報が少ないほうが流行りで売れるのだろう。
売って何ぼの営利企業、それだったら仕方が無い。
こんな管理人のような変わり者の言う事を効いて商品を作っていたら、メーカーはつぶれてしまう。
フォーカスリングの感触
50mmf1.2同様、フォーカスリングはシットリ滑らか。
若干、50mmよりも軽い感じがする。
この硬さ、経年劣化でグリスが硬くなったりもするもの。
回転の硬さに関しては、分解清掃で再びグリスの塗り具合によって自由自在に調整出来るそうだ。
元ニコンサービスにいた人から直接聞いた話。
Ai 24mm f2sは、購入以来20年経過した今も、その滑らかさはほとんど変わらない感じだ。
ゴムローレットの滑り止めもブヨブヨにふやけたりせず、購入当初の感触のまま今に至っている。
無限遠から最短撮影距離までの回転角は、およそ90度と、フォーカスのストロークはマニュアルレンズにしては若干短い感じがするが、別に問題なく使える。
最短撮影距離は30cmと、今時の24mmとしてはあまり寄れないが、当時のレンズはだいたいこんなものだ。
ちょっと寄りが物足りないなと感じる事も時々ある。
レンズ逆付け(リバース)アダプター
このレンズ、さらに被写体をぐっと引き寄せて撮る裏技が出来るレンズでもある。
別にこのレンズ専用ではないが。
その裏技に使う製品がこちら
ニコンリバースアダプター
片側には52mmのフィルターネジが切ってあり、反対側はカメラボディに装着出来る仕様。
レンズの表裏逆に装着して撮影するアダプター、まさしく裏技。
ステップダウンアダプターなど使用すればさらに大きいフィルター径のレンズも装着出来るが、基本は52mm。
ニコンのフィルター径52mmにこだわっていたのはこんな点にもあったのだろう。
逆付けした場合、レンズの焦点距離が短くなるほど、より拡大して撮影出来るのだ。
という事で、24mmf2.8とこの24mmf2が、この逆付けアダプターを使用して最も拡大出来るレンズという事になる。
中間リング(PK-11、PK-13)を装着
このレンズ逆付けアダプターと中間リングを使用すると、超高拡大撮影が結構な高画質で出来るのだ。
どういう使い方かというと、写真の逆付けアダプターを使用、さらには中間リングを挟んで使うのだ。
当然、近距離の極狭い範囲しかピントは合わないので、使い勝手は良くないが、そんな強拡大の撮影、手軽に撮れないのもまた確か。
上のシステムで撮影倍率を見るため定規を撮影すると、長辺に9.2mmの範囲が入ったので、撮影倍率は3.9倍で撮影出来る事が分かった。
中間リング無しで撮影すると、14.5mmの範囲が入り、撮影倍率は2.5倍。
どちらも、かなりな拡大率となる。
この方法だと、フォーカスリングをまわしたところでほとんどピント位置は変わらないので、カメラを前後に移動してのピンと合わせになり、撮影倍率はほぼ固定になる。
通常、最短撮影距離30センチから、いきなりの超高拡大で、つなぎとしては使えない特殊な拡大撮影方法。
それでも特に大きな撮影倍率が必要な時、便利な機能だ。
フィルター表面を這うカビの菌糸
上の写真、長年放置されたフィルターの表面に生えたカビの菌糸を、上の組み合わせで最高拡大率3.9倍で撮った写真。
画面の中に、ミクロの小宇宙が広がった。
上の写真はノートリミングで出したもの、画面周辺までかなりしっかりと像を結んでいる様子が分かる。
絞り設定が自由自在なオールドレンズ、こういった特殊な使い方にも、文句をいう事もなく黙って従ってくれるレンズなのだ。
このレンズ逆付け撮影方法、絞りリングが付いていれば、ほとんどのレンズで可能だ。
開放だけだったら、別にニューレンズでも可能だが被写界深度が浅すぎてあまり実用にはならないだろう。
この方法での撮影、f値が非常に暗くなる上、絞り込み状態なのでピントを合わせるのは一苦労。
当時、ピント合わせしやすいように、撮影と同時に絞りが連動する逆付け専用レリーズも販売されていた。
カタログにはそれぞれのレンズの撮影倍率まで事細かに書かれていたのを覚えている。
管理人はそんなニコンのカタログの隅から隅まで読んでいた、ニコン好きカメラ小僧だったのだ。
昔から、かなりな変態だったようだ。
レンズの画質
レンズ構成はAi Nikkor 24mm f2.8sのレンズ構成が9群9枚に対して、Ai Nikkor 24mm f2s は10群11枚と、レンズ枚数は若干増えている。
当時の単焦点レンズとしては多い構成。
一段明るくするため、増える収差をおさえるため、よりがんばっているのだろう。
今時のレンズのように非球面レンズを使っていない、全て球面のレンズ。
使用し始めた頃は、あまり画質のいいレンズでは無いとがっかりしていた。
風景などを開放付近で撮ると、サジタルコマフレアが大きいのか周辺部分がぼやけた感じとなる。
正直、所有していたものの、あまり使用していなかったのもまた事実。
ただ、デジタルの時代となり、現像代を気にせず、気軽にテスト撮影出来るようになった今、色々とテストを行った。
デジタル一眼で撮ってみると人物などの撮影、背景をぼかすような撮影では思った以上にいい結果を出す事が分かった。
テストを繰り返していくうちに、24mmf2レンズの向き不向きの詳細が見えてきたのである。
発色はクールで渋い、昔のニコンカラー。
発色や、味わいが統一されるので、50mmf1.2との相性も非常にいい。
被写体に近づいてのポートレートの撮影にはなかなかの味わいをもたらしてくれるのだ。
開放でも周辺部分でもピントに芯が残っており、シャープさよりも、柔らかを出したいポートレートでは十分に使える。
作例1-1
24mmf2開放、最短撮影距離
作例2-1
24-70mmズームの24mm f2.8開放最短撮影距離
上に24mmf2単焦点と24-70mmf2.8の作例を並べてみた。
f2とf2.8の一段の絞りの差はこれぐらい。
いかがだろう、上作例の写りの差、明るいオールドレンズの魅力は感じていただけるだろうか?
ボケの出方も大きく違う。
ニコンの24-70mmf2.8はボケに関して評判のいいレンズなのだが、24mmf2と比べると、見劣りしてしまう。1絞りの差があるの当然といえば当然か。
ボケに関しても特に柔らかすぎず自然にボケるので、独特の雰囲気をかもし出してくれる。
こちらも、50mmf1.2とつながる感じ。
後方ボケは若干2線ボケの傾向があるが、その分手前ボケとのバランスがいいように感じる。フワッとした感じがソフトフォーカスレンズのようで、状況によってはいい雰囲気をかもし出してくれる。
非球面レンズを使用していないからなのか、素直に発生する球面収差が、画面に柔らかさを、かもし出しているのだろう。
分かりやすいように下に、上の写真をピクセル等倍まで拡大した写真を載せた。
上写真のフォーカス点をピクセル等倍で出したのが下の写真。
作例1-2
24mmf2開放、ピントに芯があって周辺がとろける感じ、柔らかく美しい
24mmf2、開放、最短撮影距離、上の写真をピクセル等倍まで拡大したもの。
作例2-2
24-70mmf2.8、24mm f2.8開放、最短撮影距離
こちら下(作例2-2)がズームレンズによるもの、2007年発売のレンズ。色収差が多少目立つ。位置が違うのはご愛嬌で!
やはりズームだなーといった感じかな。
上と比べるとしっかりとした芯が無く、のっぺりとした感じになっている。
フワッとしても、上のオールドレンズ(作例1-2)のほうが、花びらの表面の質感がよく伝わってくる。
上の作例でわかる通り、この24mmf2、開放最短でもちゃんと芯があり、周辺にフワッととろける感じに写ってくれるのだ。
まるでソフトレンズのように柔らかく、独特な雰囲気をかもし出してくれる。
最近の高性能単焦点レンズだと、これでもかというぐらい画面の隅々までフラットで、くっきりとピントが合う事だろう。
こういった背景をぼかす被写体だと周辺まで無理無理フラットに作る必要も無いのだ。
その柔らかいながらも、柔らかすぎない描写、今時のレンズと一味違った画質もまた、この24mmf2の使いがいを感じさせてくれる。
星空作例
このレンズで星は撮れるか?
実際撮ってみた。
f2.8はかなり厳しいが、f4まで絞るとそれなりに使えるようになる。
下の写真はいずれもf4に絞っての撮影。
露出は168秒、ISO1600。
全体像、24mmf2をf4まで絞って撮影
全体的に見れば、それなりに見られる画像。
しかしながら、f4まで2段絞っているにもかかわらず、4隅の光量が急激に落ち込む様子が分かる。
52mm径と焦点距離24mmレンズにしては 小さなフィルター径を採用した弊害なのだろう。
まず、中央部をピクセル等倍で出してみると。
中心部分をピクセル等倍
球面レンズだけのレンズでも、中心部分の画質は非常にいい。
なかなかの好印象。
非球面レンズを使っていない広角レンズ、オールドレンズも中心部はいたってシャープ。
さて周辺部分を見ることにしてみよう。
工の字をした独特な形サジタルコマフレアが発生した
中心部分の画像と比べると、2段絞ったにもかかわらず不思議な形をしたサジタルコマフレアが発生した。
50mmf1.2をf2.8で撮ったサジタルコマフレアよりもずっと大きい。
また、色収差も見受けられる。
天体写真をフルサイズで撮るにはあまり向いてなさそうだ。
APS-Cサイズだと、周辺部はどう写るだろう?
放射状にコマ収差が発生、周辺に行くほど大きくなる
画角をAPS-Cサイズに狭めると、かなり画質は向上した。
しかしながら、画面中心(左上)から離れ、周辺部(右下)に行くにしたがって放射状に伸びる収差、コマ収差が大きくなっていく様子が分かる。
上の作例から、シャープネスを求める天体はもちろん、風景の撮影にもあまり向いていないレンズだという事がわかる。
更なる注意点として、
もともとフィルム用に設計されたレンズ、センサーへの入射光の角度の関係か、状況によって画面周辺部に色のにじみが目立つ事がある。
50mmf1.2では見られないので、当時の広角レンズの特性なのかもしれない。
焦点距離24mmレンズとしては小さなフィルター径52mm、上の作例でもわかる通り、周辺光量の落ち込みはかなり大きい。
また、PLフィルターなどの使用にも注意が必要で、薄手のものでなければ、すぐにけられてしまう。
無理してフィルター径52mmにこだわらなければ、もっといい性能の使いまわしのしやすいレンズが作れたんじゃないかと思ってしまう。
まとめ
このAi Nikkor 24mmf2sのレンズ、画質的には特に優秀とはいえないが、条件によってはなかなかな、いい雰囲気をかもし出してくれる。
球面レンズだけで組み上げた24mm、風景や繊細さが求められる撮影にはあまり向かず、管理人自身そういった撮影ではまず使わない。
像面湾曲のせいか、中心部と周辺部で多少ピンの位置が違うように感じる。
開放付近で撮る風景などの撮影ではけっこう気になってくる。
そんな癖のあるレンズではあるが、バックをぼかして撮る時、子供やペット、花などを撮影するのが面白いレンズだと感じる。
操作性がいいのはさておいても、その独特の雰囲気を出すため、子供など印象的な写真を撮ろうとする時、あえてこのレンズをカメラバッグに忍ばせたりする。
また、滑らかに操作出来るフォーカスリングと、絞りリングが相まって、動画撮影での操作性は非常に高いので、マイクロフォーサーズに限らず、フルサイズでもこのレンズは動画でけっこう使う。
撮影していて、24mmという画角に慣れているらかもしれないが、50mmとの組み合わせはとてもバランスがいいと感じる。
今では、焦点距離24mmが、個人的に広角レンズの画角として定着した感がある。
何よりも、今時の出来過ぎ君24mmレンズよりも、レンズのサイズが非常にコンパクト。
カメラバッグに忍ばせてもほとんど苦にならない。
オールドレンズを楽しむ醍醐味の一つは、設計者が、がんばって消そうとしているものの、落としきれずに残った数多くの収差たち。
そんなレンズの収差をいかに作品に生かせるか。
当時の技術者は、腕をふるって、そのコスト内での最高の画質を求めて作っているはずだ。
非球面レンズを使っていないレンズの素直な収差を残した写り。
特に残存する球面収差は写真に味わいを与えてくれる。
このニコン24mmf2は被写体を選ぶが、使い甲斐を感じるレンズだ。
天体や風景、カチカチのシャープな写真を撮るため、今時の出来過ぎ君レンズも気になるところ。
ニコン純正24mmf1.8が2014年9月に発売となった。Gタイプで、機械絞り連動は残ったものの、フォーカスを動かした感触、なんかゴリゴリしていて個人的に好きになれない。
画質に関してはかなり良さそうなのだが、ある意味趣味のレンズ、このままMFでいいなーとも思っている。
シャープに撮るのであれば、ズームで済ませばいいやと。
24mmはニコン第三元、2本のレンズがカバーしている画角。
別に無くても困らないのである。
もし買うなら、
ニコン純正24mmf1.4も気になるが、値段と性能のコストパフォーマンスを考えると、シグマになってしまうかな?
20万越えの出費、ズームレンズで代用の効く趣味のレンズには、なかなかに厳しい。
とりあえず。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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